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インタビュー

カニエがさらっていった2004年の上半期

 昭和19年、東京・江戸川区に生まれ、数々の映画やTV「鬼平犯科帳」の〈小房の粂八〉役で知られる……というのは蟹江敬三の経歴だ。でも、カニエ・ウェストだって、日本でもポピュラーになってきている。その人気の基盤は、バリバリにメインストリームのコマーシャルな音を作っておきつつ、そういうモノを煙たがる昔気質のファンをも惹きつけずにいられないサンプリング・メソッドやラップのおもしろさで、ともすれば二極化しがちなヒップホップ・リスナーを等しく魅了したことだろう。また、ふだんヒップホップに馴染みのない層からの支持のされ方はネプチューンズ(というかファレル)にも似ていて、そのナードな佇まい、ラガーシャツを着こなすような〈シャレB〉的センス、ATCQをリメイクしたり、“Last Call”のリリックにもその名を織り込むようなネイティヴ・タンへの敬意(ファレルはN.E.R.D.曲のリミックスにネイティヴ・タン一派を招聘)……と実際に共通点は結構ある。こうした要素が結果的に万人を魅了するカニエ世界を生み出したわけで、その仕事の確かさも考え合わせると今年の最優秀プロデューサーはもう彼のものに違いない。なお、カニエは今回のブランディ“Talk About Our Love”のプロモ・クリップでは演技も披露しているが、さすがに演技だともうひとりの蟹江には敵わないようだ(しつこいって)。

KANYE WEST 『Freshman Adjustment』 Chi Town Getting Down(2004)プロモ曲やミックステープに入っていた曲などを集めた半非公式トラック集(?)。ローリン・ヒルとの疑似共演サンプリングが認可されなかった“All Falls Down”のオリジナル・ヴァージョンや、憧れのATCQのリメイクなど、ストリート・レヴェルで話題だった曲が手軽に聴ける。完全未発表曲も貴重だし、即買い!!

CONSEQUENCE 『Take 'Em To The Cleaners』 Sure Shot(2004)Q・ティップの従兄弟にカニエも大幅援助。ソウルズ・オブ・ミスチーフの趣味丸出しリメイクがよろしい。

DILATED PEOPLES 『Neighborhood Watch』 Capitol(2004)劇的な“This Way”をプロデュース。こういう仕事もやるからIQ高めなヒップホップ・ファンにも愛される?

WHITE BOY 『No Gray Area』 Icee(2004)地元シカゴのアイドル・ラッパー。カニエがラップもした話題の“U Know”を凌駕する驚愕のソウルフル・チューン連発!! カニエ節全開!!

D12 『D12 World』 Shady/Interscope(2004)カニエ仕事にしてはさほど目立ってないけど“D12 World”をプロデュース。参加してることにまず意味があるVIPな振る舞い。

TWISTA 『Kamikaze』 Atlantic(2004)いかにも早回しな定番の“Slow Jamz”はもちろん、“Overnight Celebrity”の♪ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア……なネタ調理がヤバスギ!

JANET 『Damita Jo』 Virgin(2004)何はなくとも“I Want You”。ジャネットといえどもカニエなしでシングル・ヒットは得られなかった。“Straw-berry Bounce”もキュート!

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年07月08日 12:00

更新: 2004年07月08日 17:42

ソース: 『bounce』 255号(2004/6/25)

文/出嶌 孝次

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