インタビュー

恐るべき充実度で咲き誇る、岡村靖幸のディスコグラフィー

『yellow』 エピック(1987)

  好青年っぽく迫るデビュー・シングル“Out of Blue”を含む初アルバム。同時代の品行方正ポップス(?)としてもギリギリ機能しうる“Young oh! oh!”など爽快かつ明快なファンキー・ナンバーが中心。全体的にズルムケ度や粘液の分泌は抑えめながら、エロいギターがベタ敷きされた“Water Bed”のような毒々しいサイケ・ファンクもこっそり薄笑いしている。

『DATE』 エピック(1988)

  前作とは段違いの生々しさは冒頭の“19(nineteen)”の時点で匂ってくる。ジョージ・マイケル『Faith』にも近いファンクとの間合いの取り方で、プリンスやらジャネットやら黒くてポップな趣味が全開に。モロに80's的なドラムの音色などはいまがハマり時かも? 超スケベな“いじわる”、切なさで胸が爆ぜる名曲“イケナイコトカイ”など名曲しか入ってない。

『靖幸』 エピック(1989)

  例のシンボルがジャケに初登場。前作をスケールアップした雰囲気ながら、その美意識の異常発芽ぶりは最強! ファルセットが淫らな“どんなことをして欲しいの僕に”、タイムばりのクールなファンク“聖書”などプリンスの翻案も完全に血肉化。〈心に住んでる修学旅行が育つんだ〉などパンチラインだらけの歌詞も凄いことに……。これも名曲しか入ってない。

『早熟』 エピック(1990)

  ここまでのシングルやアルバム収録曲からチョイスしたベスト盤。ただ、オリジナル・アルバム未収の“Dog Days”や“Shining(君がスキだよ)”、賑やかな青春チューン“Peach Time”の別ヴァージョンなど、後のベストでは聴けないものもあるのでスルー禁止。ゴージャスなアレンジで切なさ倍増の“Lion Heart(Hollywood Version)”が素晴らしい。

『家庭教師』 エピック(1990)

  青春全開な“あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう”の弾ける汗、名スロウ“カルアミルク”の苦い涙、〈靖幸ちゃんが寂しがっているよ〉と歌う表題曲でのヌメった悶え汁……といろんな意味でびしょ濡れ&ズルムケ。唯我独尊なグルーヴ構築と歌世界がカッコ良すぎる。最高傑作に推す人も多い一枚だけあって、これも名曲しか入ってない。

『禁じられた生きがい』 エピック(1995)

  “ターザンボーイ”や“パラシュート★ガール”など『家庭教師』以降の傑作シングル群に新曲を加えた9曲入りだが、1曲に数曲分のアイデアを詰め込んだようなハイパーな作り込みが凄まじく、とても9曲とは思えない高密度な聴後感が後を引く。ギター主体のハイブリッド・ファンク“あばれ太鼓”をはじめ、新曲も名曲しか入ってない。

『OH!ベスト』 エピック(2001)

  96年の“ハレンチ”から間を空け、99年に岡村流トリップ・ホップ(?)な名曲“セックス”で突如として大復活。2000年には“真夜中のサイクリング”で新作への期待を高め……登場したのがこの2枚組ベスト。ここからシングル・カットされた新曲“マシュマロ ハネムーン”は、Captain Funkの助力を得たニートなダンス・ポップだ。

岡村と卓球 『岡村と卓球』 キューン(2003)

  “Peach X'mas”のリミックスを手掛けるなど、前から交流のあった石野卓球との怪人ユニット。どちらが猛獣使いというわけでもなく、ニューウェイヴ流儀のエレ・ポップや暗黒エレクトロなど、両者の異形性をディープに照射し合ったコラボ作。デュエット状態の“new wave boy”などにおけるキュートな勃起感覚がいい。

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掲載: 2004年09月02日 12:00

更新: 2004年09月16日 15:33

ソース: 『bounce』 257号(2004/8/25)

文/出嶌 孝次