インタビュー

決して〈沈黙〉していたわけではない岡村靖幸の充実した〈ブランク〉を、関連作品から振り返ってみよう

 新作『Me-imi』は岡村にとって9年ぶりのオリジナル・アルバム。となると、そのブランクが注目されるわけだが、その間の彼の動きは決して一口で〈ブランク〉と言い切れるものではない。まず、96年には電気グルーヴ“VIVA! アジア丸出し”にヴォーカルでうっすら参加。同年にはコーネリアスのリミックス・アルバムにエントリーし、さらには川本真琴のデビュー・ヒット“愛の才能”を作/プロデュースするなど、裏方としても注目を集めた。その後はスカパラ“情熱のイバラ”(99年)への客演が目立つぐらいだが、2000年代に入ってその活動も徐々に活発化しはじめる。2001年にはChara(“パラシュート★ガール”で岡村とは共演済みだった)に“レモンキャンディ”を提供、前後して黒田倫弘やSOPHIAも手掛けている。

 そして、朝日美穂の提唱によってflex lifeやクラムボン、イルリメら幅広い後進アーティストが参加した岡村のトリビュート・アルバム『どんなものでも君にかないやしない』が登場した2002年には待望論もピークに。この年には〈岡村靖幸と石野卓球〉名義でシングル“come baby”をリリースし、megのデビュー曲“スキャンティブルース”も手掛けている。フェスや単独ツアーで7年ぶりのパフォーマンスを披露した2003年には、〈太陽にほえろ!〉のリミックス・アルバムでファンキーな手捌きを閃かせ、NORTHERN BRIGHT“HAPPINESS”をディスコ・ハウス調に改編するなど、完全復調を予感させた。

 その快調ぶりを引き継いで、今年の岡村は多方面で出ずっぱり状態だ。まずは、話題になったニューウェイヴ・トリビュート盤『Fine Time』にて、トーキング・ヘッズの“Burning Down The House”を邪気たっぷりに自己流カヴァー。また、生前交流のあった尾崎豊のトリビュート盤にて“太陽の破片”を不穏かつ凄絶に熱唱。さらにはシーナ&ザ・ロケッツのリミックス・アルバムに参戦し、“Lazy Crazy Blues”をベースのブイブイに効いたブリープ・パンクに改編。そして、櫻井敦司のエロ・デカダンなプラスティック・ファンク“SMELL”をプロデュース……と、いずれもが充実した仕上がりで実にカッコイイ。こうした実りの多い活動から得たものを濃縮還元したのがニュー・アルバム『Me-imi』だと捉えれば、その高密度な傑作ぶりにも納得がいく、というわけである。

▼本文に登場した作品を紹介


コーネリアスのリミックス・アルバム『96/69』(トラットリア)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年09月02日 12:00

更新: 2004年09月16日 15:33

ソース: 『bounce』 257号(2004/8/25)

文/出嶌 孝次

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