The Libertines
ゴシップの多さこそ優れたロックンロール・バンドの勲章だ! そしてなにより、この荒々しい2作目『The Libertines』がそれを雄弁に物語っている!!
ブリティッシュ・ビート、パンク、ガレージなど、イギリス生まれの系譜を十分に感じさせるロック・サウンドと、どこか切なさを覚えるメロディー、そして過激な歌詞。2002年のアルバム『Up The Bracket』でデビューして以来、自由奔放な姿勢で聴く者のハートをガシッと掴んできたイーストロンドン出身の4人組、リバティーンズ。世界規模で話題を振りまいてきた彼らが、ついに2作目となるアルバム『The Libertines』を完成させた。独特のメロディーはさらに磨きがかかり、そのサウンドはバンドの熱さをヴィヴィッドに伝える前作以上にラフな仕上がりとなっている。では、前作での成功が作品作りに影響を与えたことなどはあったのだろうか。話を訊いた。
「ファーストが成功したから、アルバムが好きなように作れる状況にはなったよ。でもオレらはあらかじめ計画とか方向性を決めたりするようなバンドじゃない。それがオレらにとっては普通なんだ。ほかのバンドは違うようだけどね。やりたいようにやって、それが評価されたのはラッキーだね。最初に自分たちでイメージを作ったら、それをキープしなきゃいけないけど、最初から素をさらけ出して、それをみんなが好きになってくれればいいんだ」(カール・バラー、ギター/ヴォーカル:以下同)。
さて本作は、前作に引き続きプロデューサーにミック・ジョーンズを迎え、全曲ライヴ・レコーディングされた作品である。そしてファンならご存知かと思うが、このアルバムはバンドが、バンド内のある問題と向き合いながらレコーディングした作品だ。その問題とは、フロントマンであるピート・ドハーティの深刻なドラッグ依存である。
「今回も、さあ作ろうぜ!ってその場でレコーディングしていったんだよ。ミックとは2回目の仕事だしやりやすかった。でも今回はバンド側が前とは違っていたから、彼にとっては違った印象だったかも。うん、かなり大変だったのは事実さ。スタジオに2か月いたけど、レコーディングは10日間しかできなかった。なぜかというと、ピートがレコーディングできる状態じゃなかったんだ。もうアルバムが出来ないって思ったこともあったけど、こうして出来たんだ。その間には血と汗と涙とヴァイオレンスがあったよ。その反面、完成したときの達成感もあったけどね」。
〈フジロック〉でもそうだったが、彼らはいまピート抜きでライヴを行っている。それがマイナスに作用することもなく、パワフルでかなり良いステージを披露している。現時点でもピートの問題は解決していない。それでも彼らはピートの復帰を強く望んでいるのだ。
「アルバムの話は何千回もしてるけど、しかし、アルバムを通して聴いたのは1度だけさ。オレにとっては、いろんな意味で思い出が詰まったアルバムだね。 オレらは待ってるよ。彼はいまだってバンドのメンバーなんだ」。
さあ、深刻な話もあるが、彼ら本来の持ち味は活きの良さ。気分を新たに前向きな話をしよう。元気といえば、いままたイギリスのバンド勢が活気づいている。その先陣を切ったのが彼らだったりもするのだが、当事者としてこの状況をどう捉えているのだろうか。そのなかでの〈リバティーンズらしさ〉とは?
「常にイギリスにはロック・シーンがあったんだ。でもサイクルが巡ってスポットライトが、とあるバンドに当たる。そうすると、周りのバンドも勇気をもらってガンバルぞって刺激を受けるんだ。オレら毎週月曜に、ピカデリーサーカスのインフィニティってところで、若いギター・バンドが出るイヴェントのオーガナイズをやってるんだ。良いバンドがたくさん出てきてるし、お互いサポートし合ってる良い関係さ。オレらに関しては、他のバンドと違うことをやろうなんて意識したこともないけどね。とにかく自分たちが良いと思う、信じていることを続けていく、誠実に素直にやっていくのが一番大事なんじゃないのかな」。
そして最後に、リスナーに向けたアルバムの聴きどころを訊いてみた。しかしカールは、「うーん、ここが凄いから聴いてくれっていうのはないんだよね。これがありのままの自分たちなんで、聴く人も好きに楽しんでよ」と、まさに自由思想者=リバティーンズっぷりを存分に発揮してくれた。つまりはCDを手に取った瞬間から、リスナーもリバティーンズってこと?
「うん、そのとおり!(と言って、腕のタトゥー〈LIBERTINES〉を見せる)」。