原田郁子
シンプルに、迷うことなく綴られた12編の〈こころのうた〉――童謡にも似た輝きや煌めきに満ちたファースト・ソロ・アルバム『ピアノ』が完成。さあ、まっさらなキャンバスに描かれた郁子ちゃんのスケッチを覗いてみよう!!
もうこのアルバムに向かってた
「団地でピアノを習い始めたんだけれど、聴こえてくるんだよね。となりの家とか、歩いてても、家のなかから練習してるのが。それが最初の音楽体験なんだろうなって思うんですよね」。
聴くもののこころを優しく解きほぐしてくれるヴォーカル、ときに繊細に、ときにダイナミックなタッチで魅了する鍵盤で、クラムボンのメンバーとしてのみならず、多くのバンドのサポートを経験してきた原田郁子は、ピアノについて〈なまもの〉だと形容する。彼女は初めてのソロ・アルバムのタイトルを、自身にとって欠かせないもので名付けた。アルバム『ピアノ』は、共演を続けてきたPolarisのオオヤユウスケをプロデューサーに迎え、ふたりによるデモから膨らませていったのだという。
「ハナレグミやPolarisでも、ゲスト・プレイヤーというよりも、そのステージにいるときはバンドのメンバーだっていうぐらいの体験だった。ハナレグミはホントに爆発みたいな感じだったんですよ。みんなが〈すごいよこれは!〉って、ミラクルが起きてる状態で、音楽を楽しむことというか、喜びを肌で感じたんです。Polarisのツアーに参加したときもそうで、ステージに上がっていて、その音に漂っていられたし、なんにも無理やりなものがなくて、すごい居心地が良かったんですよ。その辺りからもうこのアルバムに向かっていたんじゃないかって」。
自然に後押しされるように制作に入ったというが、彼女自身の声は伸び伸びと実に〈たのしそう〉だ。まるで彼女の部屋に招待されたような、親密な空気の中で、よりまっすぐに歌とメロディーが届けられている。
「なるべく家で歌っているような、弾いているようなものがそのまんま録音できるような状態がいいよねっていう話はしたんだけど。どんどん自分の内側から出てきているのがわかったから、どこにどう広がっていっているのかさっぱりわからないんだけれど、それをあえて的をつけてまとめたくなかったんだよね。それが初期衝動っていうものだっていうのは、ごく最近わかったんだけど(笑)」。
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