THE ZOOT16の血肉となったスピリット、そしてフェイヴァリットを渡辺自身が語る!
パンク編
この『RIGHT OUT!』でパンクというものはひとつも意識はしていないが、〈こんなアルバムにしたい〉とイメージしたものをピックアップしよう。サウンドより、アルバム全体にパンクのその姿勢が出ればイイと思った。固定概念を壊し、革新的にやったこの2枚が大好きだ。クラッシュは、僕が語るまでもないRUDE BOYのバイブル! 初期衝動に留まらず、進化する姿が勇気を与えてくれる。ニュー・エイジ・ステッパーズは、その当時、水っぽいマンネリしたUKロックに、ダブという〈毒〉を注入した。アート・ワークをはじめ、その毒=パンク・センスは今でも世界中に潜伏している。
ダンス・ミュージック編
ノーマン・クックがファットボーイ・スリム以前にやっていたビーツ・インターナショナルのセカンド・アルバム『Excursion On The Version』はいまでもDJバッグに入っている一枚だ。その前のバンド、ハウス・マーティンズも大好きだが、いろんな音楽のジャンルを消化し、リスペクトしながら自分のサウンドにしているこのセカンドに共感する。マヌー・チャオの『Radio Bemba Sound System』は、前に組んでいたマノ・ネグラより力が抜けて、よりマヌーの人間性が音に反映され、21世紀最高のライヴ・アルバムになった。いまいちばん対バンしたい人だ!
ビーツ・インターナショナルの91年作『Excursion On The Version』(Go Beat)
ポップス編
トーキング・ヘッズの『Stop Making Se-nse』は永遠のバイブルだが、この『Little Creatures』も負けてはいない。19歳の時に朝から晩まで聴いていた。音楽制作する前は必ず聴く一枚だ。これの2年前に、デヴィッド・バーンがプロデュースしたファン・ボーイ・スリーのセカンド・アルバムが『Waiting』だ。もちろんスペシャルズは好きだが、それを二分して生まれたジェリー・ダマーズのスペシャルAKAや、このテリー・ホールのファン・ボーイ・スリーの進化した形や音楽のほうが好きだ。ジャム~スタイル・カウンシルも同じだ。自分の成長を作品に出していくのは僕の永遠のテーマだ。
ジャズ編
僕の音楽制作にもっとも影響を与えてくれているのが〈モダン・ジャズ〉だ。ジャズは主にスタンダードの曲を各ミュージシャンがいったん壊し、原曲を残しつつその曲全体を、自分の〈個〉で最大限に表現する音楽だ。僕はその様がたまらなく好きなのだ。僕はジャズマンにはなれないし、なりたくもない。ただのジャズ・ファンでいたい。アナログ・レコードから聞こえてくる、力強さ、やさしさ、セツなさ、情熱、愛、太さ、しなやかさ、そして、潔さ……テクニックや理論より、そのセンスを学び、感じることが僕にとって最高の時間だからだ。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2004年10月28日 16:00
更新: 2004年11月04日 18:28
ソース: 『bounce』 259号(2004/10/25)
文/bounce編集部