フィルムメイカーとしてのジャックが観せる〈映像的ビート感〉
フィルムメイカーとしての顔も持つジャック・ジョンソン。スマトラ島にて撮影を行った「ザ・セプテンバー・セッションズ」はサーフィン・ムーヴィーのマスターピースとして好評を博した。それと彼の初監督作品「シッカー・ザン・ウォーター」。この2本のドキュメンタリーで、ジャックは映像作家としての確かな腕を世間に示した。よく言われることだが、波乗りならではの目線で被写体と風景を切り取っているところが素晴らしい、と。確かに彼の映像作品はまるで波に、そして波と戯れるサーファーに、直に触れているかのような感覚を観る側に与えてくれる。カメラは目の前に現れるすべてのものの呼吸をも定着させようと働き、その目的を見事に達成しているのだ。両作品は多くのサーフィン・ムーヴィーと同様に、魅惑的なスロウモーション世界が展開している。飛沫が、波光が、潮風が、こちらに向かってゆるやかなスピードで迫ってきて、優しく眼球を撫でてくれる。このスロウモーション効果だが、彼の音楽に身を委ねたときにも得られるもの、つまり彼の音楽に内包されているもののことで、両者の佇まいは驚くほどに近似している。彼の音楽が持つビート感がそのまま映像となっている、という印象を受けずにいられないのだ。しかもそれは、自分の才能に自覚的であるからこそ為せるワザだといつも思うのである。映画で使用される楽曲のセンスの良さについては、言うまでもない。最高。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2005年03月10日 12:00
更新: 2005年03月24日 18:52
ソース: 『bounce』 262号(2005/2/25)
文/桑原 シロー