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インタビュー

Gorillaz

超豪華覆面バンド=ゴリラズが、ディープなアイデアに満ち溢れた新作『Demon Days』を引っ提げて、4年ぶりに音楽シーンに戻ってきたぜ!!

大成功から空白の4年間!


 ヴァーチャル・バンドというコンセプト、ジェイミー・ヒューレットによるイラスト、そしてヒップホップとダブをミックスしたサウンド・プロダクションに独特のポップなエッセンスを加えて世界中に強烈なインパクトをもたらしたゴリラズ。2001年にリリースされたアルバム『Gorillaz』の600万枚というセールスには、さすがに誰もがド肝を抜かれたことだろうが、当の本人たちは当たり前と言わんばかりだ。

「そりゃ、もちろん成功すると思ったさ。自分で〈売れないだろうな〉って思ってるようなアルバムをレコーディングするってことは、(競馬で)勝ちっこないと思ってる馬に賭けるようなもんだろ。売れっこないと自分たちで思ってたら、最初から(アルバムを)作ったりしなかったよ」(マードック・ニコルズ、ベース)。

「あとになって考えてみれば、どうして成功したのかその理由がわかったよ。いま思えば、あの“Clint Eastwood”のプロモ・クリップは革新的だった」(ラッセル・ホブス、ドラムス)。

 リリース後はアメリカ・ツアーや、日本でも〈ソニックマニア〉に出演、おまけに映画製作の話が持ち上がってLAに拠点を移したりと大忙しだったという。

「アメリカではあちこちから映画製作のオファーが舞い込んできたんだ。そのチャンスを逃すなんてもったいないって、あの時は思えた」(2D、ヴォーカル)。

「素晴らしい作品を作る時にはたいてい、ヴィジョンと計画っていう要素が必要なもんでしょ。でも、私たちがLAでいっしょに仕事をしていた人たちは、成りゆき任せですべてをこしらえて……」(ヌードル、ギター)。

 映画の話はどうやら散々だったようで結局頓挫。アニメ・バンドといえども成功による弊害には抗することもできず、ここからそれぞれ長い休暇へ入ってしまう。マードックはメキシコの売春宿で偽の小切手を使って捕まり18か月間ティファナの牢屋へ、ラッセルはアイク・ターナーによく似た人物の地下室でしばらく暮らし、ヌードルは自分のルーツを探求しに日本に1年間滞在、2Dはイギリスの海岸沿いに住む父親の家に転がりこんで父親がやっている遊園地でバイト、ともとの環境と調子を取り戻すまでにしばらく時間をかけたらしい(休暇になっていない方も中にはいますが)。こうして4年ぶりに届けられたアルバム『Demon Days』は、全体をダークなトーンでまとめ上げる一方、豊富なアイデアが散りばめられた多彩なリズムと素晴らしいゲストに囲まれて完成した。そしてプロデュースには、デーモン・アルバーン(ブラー)とあの『The Grey Album』で一躍名を馳せたデンジャー・マウスが参加!

「今回のアルバムは、実はヌードルがひとりでほとんどの曲を書き上げたんだ。マードックは自分の手柄にしようとしているみたいだけどさ、でも基本段階から完成までこれはヌードルの構想に従って作ったアルバムなんだ」(ラッセル)。

 マードックは「俺がちゃんと前もってどんなサウンドがいいか詳しく教えておいたからできたんだ」と言っているが、「実際はテープにハミングしてただけじゃん!」(2D)だそうです。エセックスにあるコング・スタジオでひとりで作業に没頭していたヌードル。当初はある程度曲が完成してもパッしなかったようで、「いい曲特有の電気が走るような魔法が必要だった」(ヌードル)らしい。そこで登場するのがデンジャー・マウスだ。

「彼は本能的で、洞察力に富んだプロデューサーだと思う。曲の関連性というか魂を探そうとするのよ。その曲の声と、他の曲との間に交わされる会話に耳を傾けながらね。それによってアルバムが全体的にひとつのものとして機能していくんだわ」(ヌードル)。

 今回のアルバムを聴いた時、ファースト・アルバムよりも焦点が定まり、ひとつの流れを感じることができれば、それはデンジャー・マウスとのコラボレートによる成果だ。ジョージ・ロメロ監督によるゾンビ映画の古典的名作「ゾンビ」(77年)からのサンプリングを使用した不穏で不気味なイントロに始まり、「インフルエンザぐらい伝染性があるもの」(ラッセル)というダイナミックでアップテンポなビートとクレイジー&間抜けなデ・ラ・ソウルのラップが冴えを見せる“Feel Good Inc.”、「世界中で影響を与える存在となるのは間違いないよ」とラッセルのお墨付きのルーツ・マヌーヴァによるマシンガン・ラップとマルティナ・トップリー・バードの歌声が聴ける“All Alone”、「俺にとって快楽主義と麻薬エネルギーを意味する人物」(マードック)というデニス・ホッパーが味のある語りを聴かせる“Fire Coming Out Of The Monkey's Head”、そしてロンドン・コミュニティ・ゴスペル合唱団の希望に満ちたハーモニーで幕を閉じるラストまで、さまざまな楽器類、多彩なゲスト、微妙な音の質感調整など隅々まで意識が行き届き、ストーリーを紡いでいる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年05月12日 12:00

更新: 2005年06月02日 18:39

ソース: 『bounce』 264号(2005/4/25)

文/青木 正之

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