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インタビュー

坂本が好む音楽――再度聴き惚れた音楽について語る

 カン、ピーター・アイヴァース、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド。他は入れ替わってもこのへんがずっと好きなのは変わらない。とにかく全部が好き(笑)。あとT・レックスも。最初ティラノザウルス・レックスはいいなあって思ってたんですけど、T・レックスは後期もいいし……全部いいな(笑)。サビとか単調なコードの繰り返しだったりして構成とかもダラダラしてるんだけど、アレンジですごい聴かせるっていうか、あのギターの音響っていうか、どうやってやってるのかわからない。あんまりやらないけど、遊びで時々ツェッペリンとかクリムゾンとかバンドでコピーすると、それなりにソックリにできて笑えるんですよ、楽しくて。T・レックスはね、音とってやっても全然楽しくないんですよ、ヴェルヴェットもそうなんだけど。全然そういう問題じゃない何かがあって違う。

 クラフトワークは急にまた聴きたくなって、伝記を読みながら年代順に聴いていって。相当時間かかりましたね(笑)。いま聴くとすごい温かみがあるというか、素朴だし、人間っぽいなあって。レコーディング中は毎日小1時間、車に乗ってスタジオに通ってたんですけど、なんでクラフトワークとかを聴いてたかっていうと、あんま運転の邪魔にならないから(笑)。ワン・アイデアみたいなところがあるし。ジャーマン・ロックはね、周期的にマイブームがきますね。いつ聴いても〈いま〉の音楽みたいに聴こえるし、時代時代で読み替えが可能な音楽だなって。

 スーサイドはいま聴くと和むというか(笑)、TB(スロッビング・グリッスル)でも和んだりして(笑)。巷に溢れてる音楽のほうがよっぽど刺々しくて、殺人音楽に聴こえる(笑)。渋谷の街とか車に乗ってて、外は人混みがバーッとあってギラギラしてて、車内はスーサイドが流れてるんだけど、スーサイドって牧歌的だなあって思いますよ(笑)。音色のミドルが充実してるのが好きなんですけど、最近のはロウとハイが必要以上に出てて、そこに自己主張が加わるから疲れる(笑)。情報量が多いようでいて実は少ない。そういう音と比べると地味に聴こえるジャーマン・ロックとかが時代時代で読み替えができるってことは、情報量や内に込められたイマジネーションが深いってことだと思うんですよ。カンも、いつ聴いても古くならないから。現在の多くのサウンドは疲れるし、長く聴けないけど、スーサイドやTBのほうがやさしい音に聴こえちゃう。結局、それらが内包する過激さであるとかは、現在の多くの音楽とはやっぱり比べものにならないですよね。
▼文中に登場したアーティストの作品および関連盤を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年05月26日 11:00

更新: 2006年08月11日 19:50

ソース: 『bounce』 264号(2005/4/25)

文/ダイサク・ジョビン