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インタビュー

M.I.A.(3)

音楽には条件がない

 そしてシンセ(ピーチズと同じMC-505)を購入した彼女はトラックメイキングに没頭していきます。最初に出来上がったのは『Arular』の最後に入っているトラック、その名も“M.I.A.”でした。そうやって完成した数曲入りのデモテープを、「彼の作る音が気に入っていたから、顔も知らないのにクラブを回って探して(笑)」というスティーヴ・マッケイに手渡したことで、この恐るべき怪物、M.I.A.が誕生しました。2003年に12インチ・シングルで“Galang”をインディー・リリースし、たった500枚しかプレスされなかったそのレコードに惹き付けられたXLと契約。昨年の“Sunshowers”で正式デビューを飾っています。そして、このたびの『Arular』に至るわけですが、レゲエとヒップホップをベースに、バングラやらグライムやらエレクトロ、クランク……といった古今東西のおもしろビート音楽を全部掛け合わせて、そこからキモ以外の要素を思いっきり引き算しまくったような内容は、もはや聴いてもらうしか説明のしようがないものです。今回アルバムを完成させた感想をマヤはこのように話してくれています。

「いままで私の中に蓄積されていたものを全部出した感じね。ほとんど引きこもって制作していたから自分との対話も多かった。少ない選択肢から何を生み出せるかという私の考え方がよく出たアルバムになったと思うわ。私がアートをやっている時に感じたことは、アートはいろんな意味で排他的だということ。ある種の基礎知識が必要だったり、インテリ層のものだったり、お金がかかったり。その点、音楽は万人向けだと思うの。何も条件がない。だからこそ、アーティスティックなだけじゃなく、エンターテイメントの要素も侮ってはいけないのよ」。

 M.I.A.は、マヤは自分の音楽で世界中をカラフルにしようとしているのかもしれませんね。素敵な人です。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年06月30日 10:00

更新: 2005年07月07日 19:30

ソース: 『bounce』 266号(2005/6/25)

文/轟 ひろみ