安室奈美恵

スウィートなレッスンを終え、スタイルを磨き上げた彼女が、ついに戴冠の時を迎えた。その情熱が、その躍動が欲しいなら、彼女のグルーヴにいますぐ身を任せるしかない……

　　それまでのサウンド・イメージから大きく脱却したSUITE CHIC名義での作品制作が転機となり、前作『STYLE』ではZEEBRAやVERBALといったラッパーなども迎え、グッとヒップホップ寄りに舵を取ったサウンド・プロダクションでわれわれを楽しませてくれた安室奈美恵。そんな彼女が最新アルバム『Queen of Hip-Pop』でテーマにしたのは、タイトルにもある〈ヒップ・ポップ〉。彼女が常々意識している〈踊れる／踊る〉という要素を最重要視したうえで、ヒップホップにある先鋭性や革新性を求めつつ、ポップスとしてのカジュアルさやキャッチーさも孕んだ曲がここには収められている。ここ数年、日本のメインストリームのヒップホップが急速にポップ化／キャッチー化を進めるなか、正直、いまこの〈ヒップ・ポップ〉という言葉を使うことに〈あ、やっちゃった?〉的な違和感を覚えるヒトも多いかもしれないが、よくよく考えてみれば、安室奈美恵ほど、その両方のフィールドを自由に行き来し、体現できるシンガーはいない。それはこのアルバムを聴けば実証されるはずだ。

あぁ、コレどうしよう!

　「『STYLE』の時もそうだったんですけど、アルバム・タイトルは一言で作品のイメージをわかりやすく表したものがいいなっていうのがあるんですね。で、〈Hip-Pop〉って、あやふやで中途半端な言葉かもしれないけど（笑）、それがいちばんわかりやすい言葉かなって。今回はJ-Popに偏ってるわけでもないし、ヒップホップとかR&Bにも偏ってない気はするので。まあ、そこに〈Queen〉も付いちゃったんですけど（笑）」

――前作の音作りはヒップホップに寄っていたと思うんです。でも、今回は、たとえば4つ打ちがあったり、バングラがあったり、王道のバラードがあったりと、ヒップホップ／R&Bの一言では括れないヴァラエティーがありますよね。前作と今作で意識の変化はあったんですか?

「あんまりカテゴリーにこだわらずに、いろんなジャンルの曲を聴かせてもらって、そこからいいなと思ったものをセレクトしてるので。ヒップホップも好きだし、ポップなものも好きだし、とにかくカッコイイ!と感じたもの、ライヴでの自分の姿が想像できるものにこだわりました」

――ところで、今回は初顔合わせとなるNao'ymtと計5曲を制作してますね。彼とは安室奈美恵名義では初となるデュエット曲“Ups & Downs”もあるし。

「これはもともとひとりで歌う予定だったんです。でも、仮歌のNaoさんの歌声がものすごく綺麗で。Naoさんの声って、まっすぐに耳に入ってくるんですよ。聴いててすごい気持ちいい。で、Naoさんの声もぜひ入れたいって思って、デュエットの提案をしてみたんです」

――歌うときに気をつけたところは?

「聴いてて、すごく柔らかい、優しい感じの曲だったんで、そのイメージを壊さずに歌うように意識しました。柔らかさはすごく大切にしたいなって。キンキン声じゃなくて、ちょっとウィスパー気味に出したりとかしたいなって。そう思いながらも、〈難しくてなかなかできないなぁ〉とか思いながら（笑）」

――彼が作った“No”“WoWa”は、それとは一転してドラムビートが前面に出たフロア・チューンですね。

「特に“WoWa”は夏っぽくて好きですね。気持ちいい。ライヴで歌ったら楽しいだろうなって思いながら歌入れしてましたもん」

――コンサート会場というよりもクラブのフロアで聴きたい感じの曲ですよね。

「そっちのほうがもっともっと楽しめそうですよね。やってみたい!　……でも、勇気がない（苦笑）」

――いやいや。こうなったらクラブでリリース・イヴェントやっちゃいましょうよ!

「ね!　ホント今回はいい曲ばっかりなんですよ、自分で言うのもなんだけど（笑）。もう嬉しすぎて、〈あぁ、コレどうしよう!〉みたいな（笑）」