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インタビュー

TONY YAYO(3)

限りなく完璧に近いアルバム

 そんなイエイヨーの凄まじいエナジーは、このたび登場するファースト・アルバム『Thoughts Of A Predicate Felon』にも如実に反映されている。アルバムの内容について、50は「イエイヨーのアルバムはパズルの最後のピースって感じだな。オリジナルのGユニットから最後に出てくるわけだから、奴のアルバムはよりパーフェクトなんだよ。一枚のアルバムとしては完璧に近い作品じゃないかな。……ほら、俺のアルバムって長いだろ? 『The Massacre』にしても21曲入っていたし……その点イエイヨーのは15曲で60分以内、しかも全曲素晴らしい曲ばかりだぜ」と、自分の作品を差し置いてまでも絶賛する入れ込みようだが、実際これまでのGユニット構成員の各ソロ作と比較しても、『Thoughts Of A Predicate Felon』にあるヴァラエティーの豊かさとタイトさは他を圧倒する。

「タイトルにある〈Predicate Felon〉ってのは刑務所を何回も出入りする奴のことなんだ。俺は去年の1月9日に出所して次の日にまた逆戻りしたからな。例えば“Dear Suzie”って曲があるんだけど、ここでは獄中で女の子と手紙のやり取りをしていた経験が活かされてるし、アルバムの半分は服役中に書いた曲だよ。残り半分はストリートで書いたもので、オープニング・トラックの“Homicide”では死を、“Eastside Westside”では東西それぞれの人々の心情を描いている」。

 そして、「名前よりも音楽そのもののクォリティーにこだわった」という制作陣は、新たにGユニット入りしたモブ・ディープのハヴォック以下、シャ・マネーXL、ブラック・ジェルーズ、サム・スニード、メガハーツ、DJカリールなど。ゲストはジョーとジャギド・エッジの参加に目を引かれるが、エミネムやオービー・トライス、そしてGユニットの各メンバーと、基本的に気心の知れた仲間内中心の人選。盟友50は実に3曲でマイクを握っていて、そのなかにはリード・シングルとしてヒット中の“So Seductive”も含まれている。熱心なファンであれば、50が“Candy Shop”のイントロ部分で〈So seductive...〉と言っていたことをここで思い出すだろう。

「“So Seductive”は“Candy Shop”の前に書いた。それで、50が“Candy Shop”の冒頭で〈So seductive...〉って言ってたんだ。50は初めて“So Seductive”を聴いた時から〈絶対ヒットするよ!〉って主張しててね。〈ファースト・シングルにするべきだ〉って譲らなかったんだ。奴は1,100万枚のセールスを経験してるし、実績があるからその言葉を信じたんだよ」。

 こうしたコメントの背後からはイエイヨーと50の強固な繋がりが透けて見えてくるようであり、50が今回のイエイヨーのプロジェクトにどれだけ熱心に取り組んでいるかが汲み取れるだろう。〈限りなく完璧に近いアルバム〉でようやくパズルを埋めたGユニットが、その本領を発揮するのはこれからなのかもしれない。
▼『Thoughts Of A Predicate Felon』に参加したアーティストの作品。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年09月15日 14:00

更新: 2005年09月29日 19:45

ソース: 『bounce』 268号(2005/8/25)

文/高橋 芳朗

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