インタビュー

ラヴコールが殺到している個性派プロデューサー、カシンの手腕に注目!!

 本稿のインタヴューでSaigenjiが語っている〈そこはかとなく変〉という感覚がカシンを語る上での重要なキーワード。彼が本格的にシーンの中で頭角を現してきたのは90年代後半あたりから。音響ユニットのシェルパ・フェホを筆頭に、フェルナンダ・アブレウやマリーザ・モンチといった歌姫たちの作品でのプログラミングから、スカコア・バンドのアカボウ・ラ・テキーラ、ガレージ・バンドのロス・エルマノスなどでは優秀なベーシストとしてもバンドの精神的支柱を担ってきた。テクノロジーに精通し、しかもプレイヤーとしての力量も十分で、おまけに誰よりも奇抜なアイデアと遊び心を備えてるんだから(楽器クレジットに〈ピンポン〉とか〈ゲームボーイ〉なんてザラ)、すぐさま新世代の要注目プロデューサーとして一目置かれる存在となる。

 なかでも、アドリアーナ・カルカニョットやカエターノ・ヴェローゾといった、いわゆる〈知性派〉と言われるアーティストからの信頼が厚いカシン。カエターノがジョルジ・マルチネルと組んだ2002年作『Eu Nao Peco Desculpa』、アート・リンゼイの2004年作『Salt』などで聴かせる、シンプルながらも研ぎ澄まされた鋭利な刃物のような切れ味を持つアレンジには脱帽の2文字しか出てこない。彼の母体となるユニット、モレーノ+2及びドメニコ+2でもサウンド面の主導権は彼が握っているし、CDは未リリースながらリオのハイソな若者たちに大人気のダンスホール・ビッグバンド、オルケストラ・インペリアルのバンマス的存在でもある。また、このバンドの看板シンガーでもある女優、ダルマ・ジ・フレイタスのアルバムに、元ノーヴォス・ヴァイアーノスのダジの初ソロ作も手掛け……と、カシン印のおもしろ音源が続々と登場。お楽しみはまだまだこれからだ。

▼文中に登場するアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年09月29日 12:00

更新: 2005年10月06日 20:11

ソース: 『bounce』 269号(2005/9/25)

文/蓮華 漣

記事ナビ