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インタビュー

Ying Yang Twins(2)

プレッシャーなんてないぜ

 リル・ジョンの活躍もあって、近年ますます注目を集める機会の多くなったアトランタではあるが、そうした状況についても「アトランタの音楽シーンは昔からずっと盛んだった。ただ周りが耳を傾けてなかっただけのことだろ」とクールに答え、〈アトランタ=クランク〉という先入観や偏ったイメージに対してもこう話す。

「アトランタの連中みんながクランクを作ってるわけじゃねえ。リル・ジョンの作るものだけがクランクなのさ。いまのアトランタにはいろんなヴァイブが混在してる。だからみんなが同じ気持ちで仕事してるわけじゃねえし、みんながただ仲良くやってるわけでもねえ。ただ、みんながグッド・ミュージックを作ってるのは確かな事実さ。それぞれオリジナリティーに溢れた連中ばかりだと思うぜ」。

 オリジナリティーという意味だと、最新アルバムの『U.S.A.(United State Of Atlanta)』こそ、これまでの彼らに対する画一的なイメージを払拭させるような新たな一面が聴ける作品で、今後の新しい展開さえも期待させるような力作になっている。特に前半の静かな立ち上がりはこれまでの彼らからは想像できなかった展開だろう。

「アトランタはクランクだけじゃねえってことを示したかったから、アルバムに入ってる曲はそれぞれがアトランタの一部なのさ。アトランタのさまざまな側面、さまざまなサウンドが聴けると思うぜ。リリックの内容からも、全米で起きてることがこのアトランタのなかでも起きてるってことをわかってもらえるはずだ」。

 話題を呼んだ異色の〈囁きラップ〉チューン“Wait(The Whisper Song)”についても「Mrコリパークのアイデアさ。ヤツがビートを作って、それをみんなで聴いていたら、〈ずっと囁くってのはどうだ?〉って話が出て、やってみたら最高にクールだったってだけさ」と、回答は素っ気ないほどクールだ。

 途切れることなく送り出されるヒット曲はどれも賑やかにパーティーを彩る派手なアップ・チューンばかりだが、当人たちは落ち着いて真摯に音楽と向き合っている。そうした姿勢から今後の活動に対するプレッシャーをどう受け止めているのかと思えば、「音楽ってモンはイン・ヤンのソウルから生まれてくるわけだから、プレッシャーなんてないぜ。スゲエ楽しんでやってる。オレ個人は弟といっしょに新しいレーベルも始めるんだ。これで、もっとデカいキャリアが築ければ嬉しいよ」と、最後まで先を見据えた回答が返ってきた。ポジティヴなヴァイブスに溢れたその姿には、今後のさらなる飛躍を予感せずにはいられないだろう。
▼『U.S.A.(United State Of Atlanta)』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年10月06日 16:00

更新: 2005年10月06日 20:04

ソース: 『bounce』 269号(2005/9/25)

文/高橋 荒太郎