インタビュー

Dwele(2)

さまざまな音楽の中心にいる

 他にも、トニ・トニ・トニやDJクイックを手掛けたG-1のプロデュース曲(“Know Your Name”)などを収録した今作。「アルバムを作る時は、どんな方向にも適応できるように、さまざまな音楽の中心にいるようにしている」というドゥウェレだが、彼の音楽は全編を通じて統一が取れているものでありながら、そこに多くの音楽的要素を見い出すこともできる。そのひとつがジャズだ。ウィントン・マルサリスとの共演まで望んでいると話す彼だが、今回はスムース・ジャズ系の有名なサックス奏者であるボニー・ジェイムズと共演(ボニーの近作にもドゥウェレが参加)、ド直球なジャズ曲“Wake The Baby”に挑戦している。

「実はこの曲はずいぶん前に作った曲なんだ。僕がプレイしていたデトロイトのクラブにボニーが来てくれたのがきっかけで、マネージャーが彼との共演を提案してくれたんだよね」。

 ちなみにドゥウェレの弟(アントワン・ガードナー)もトロンボーンを吹く管楽器奏者だったりするのだが……その弟と共にデトロイトの同郷仲間として深く交流を図ってきたのがスラム・ヴィレッジおよびJ・ディラだ。両者は新作に収録の“Keep On”にもそれぞれ客演/制作で関わり、同曲ではコモンのアルバム『Like Water For Chocolate』に収録されていたディラ制作の“Dooinit”をコモンの声も含めてサンプリング的に使うという洒落たこともやっている。

「ただコモンのあの曲が好きだったからなんだけど、やってみたら上手くいったね。コモンはアーティストとしても人間的にも素晴らしい、才能のある人だ。新作『Be』も革新的な作品だと思う。彼はシカゴ出身だけど、デトロイトにいる時間も長いよ。シカゴはデトロイトの姉妹都市だし、人間も、その考え方も似ているところがあると思うんだ。シカゴはいまカニエ・ウェストらで盛り上がっているけど、でもデトロイトのシーンはヒップホップやハウス、テクノとか幅広い音楽のタイプのものが多いし、すぐにもっとビッグになるよ」。

 デトロイトのアーティストはみんな知り合いだとドゥウェレは言う。ドゥウェレと音楽性が近いアンプ・フィドラー、またドゥウェレと同じように自主制作盤が話題を呼んでメジャー契約したモータウンのケムなども地元の親しい仲間だそうだ。

「そう、アンプ・フィドラーは友人だよ。彼も自分の領域から外へ出ることを恐れないタイプのアーティストで、その点も尊敬できるところだね。オールド・スクールの出でありながら、若いアーティストとも仕事ができる。ケムは、彼が先週デトロイトでショウをやった時、僕はアンコールで飛び入りしていっしょにプレイしたんだ。それに彼と僕は〈ジャズっぽいソウル〉という似たタイプの音楽をやっているから、やっぱりお互いに気にしているところはあると思うよ」。

 デトロイト以外にも、例えばイヴァナ・サンティーリのアルバムでプロデューサーとして同席したキング・ブリットらフィリー勢のサウンドとも繋がりがあると主張するドゥウェレ。ラヒーム・デヴォーンとの交流なども含めて、彼がそうしたネオ・ソウル的なラインに位置するアーティストであることは否定できないが、ここにきてますます強まるソウル回帰的な動きについてはどう思っているのだろう?

「いいことだと思うよ。僕の音楽が〈ネオ・ソウル〉と呼ばれていることに関しては、まあ、レコード会社も何かしら音楽に名前を付けておいたほうがマーケティングとかやりやすいだろうし……。僕としてはストレートに〈ソウル〉と呼んでくれたほうがありがたいけどね」。

 マーヴィン・ゲイが降りてきたような妖しいムードの多重コーラスなんて……まさにソウルだ。

「うん、確かにマーヴィン・ゲイを意識しながら作業をやっていた(笑)」。

 モーター・シティの輪廻転生をドゥウェレの音楽に感じた貴方は、きっと正しい。
▼関連盤を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年10月06日 12:00

更新: 2005年10月06日 20:05

ソース: 『bounce』 269号(2005/9/25)

文/林 剛

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