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インタビュー

Trina

処女に少女に娼婦に淑女──そのすべてを兼ね備えた女性として、トリーナはみたび微笑みかける。逞しく成長した彼女の誘惑から、またも目が離せない!

生き方についてのアルバム


 これほどわかりやすいキャリア・アップを遂げているアーティストも珍しいかもしれない。『Da Baddest Bitch』『Diamond Princess』、そして3枚目のアルバムとなる新作『Glamorest Life』、この3枚のジャケットを並べて単純に見比べてみてもそれはわかるだろう。人生のステージが上がっていくということは、その人が身を置く環境が劇的に変化することでもある。現在へ至るまでの変化は作品ごとに辿っていけばわかりやすく、どれもその時々のトリーナ自身を表現していると言えるだろう。トリーナはこう説明する。

「『Glamorest Life』は人生における最良の物事についての作品なの。いままでリリースしてきたどのアルバムよりも、私自身が表現されているものだと思うわ。グラマラスであることだけじゃなくて、幸せに暮らすことができたり、不幸な目に遭ったり……紆余曲折を経験して、恋愛もして、っていう人生の上り坂も下り坂も味わったうえで、それでもなお、きちんと自分自身をコントロールできている。そんな生き方についてのアルバムなの」。

 つまり、これまでの作品中ではもっともパーソナルで、トリーナの〈実像〉に近づいたアルバムということだろう。これまでのトリーナといえば、ヴィジュアルからして卑猥な性的イメージを優先したものだったし、ラップにしても露骨で生々しい描写を前面に出していたことは疑いのない事実。もちろんそれらが作られた〈虚像〉だったということではない。それもトリーナの一面ではあるが、それだけが彼女のすべてではない、という意味だ。今回は多くの女性からの共感を集めることも可能な、自己のさまざまな体験からインスピレーションを得た曲もあって、そうした側面もまた、まぎれもなくトリーナそのものであるのだろう。

「付き合っていた人がいて、いい恋愛関係だったんだけど何かが上手くいってなかったの。どんなに努力してもどんなに愛情を注いでもそうなっちゃうのね。そんな経験から生まれたのがアルバムに入っている“Here We Go”なの。私の実体験から生まれた曲よ」。

 解散したデスティニーズ・チャイルドからケリー・ローランドをゲストに迎え、フォースMD'sの“Tender Love”をサンプリングしたこの曲は、しっとりとしたピアノの旋律が物哀しい印象を与える優しい仕上がりで、トリーナの作品でこうした曲を聴くのは意外だったかもしれない。マニー・フレッシュの手による“Da Club”や、トレイ・ソングズが参加した“50/50 Love”あたりも感触としては似た部分も感じさせる。ただ、そうした部分だけにフォーカスを当てるのではなく、一方では従来のトリーナのイメージを継承する部分ももちろんある。ゲストもこれまで同様に実力者が揃っており、文句ナシのアルバムだ。

▼『Glamorest Life』に参加したラッパーの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年10月27日 17:00

更新: 2005年10月27日 17:26

ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)

文/高橋 荒太郎