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インタビュー

いま最注目すべきエリア……それはマイアミだ!!

 90年代後半にトリック・ダディがブレイクするまでは、ほとんどマイアミ・ベースへの偏見とセットで語られていたマイアミ。ただ近年、保養地や観光地としての人気なのかもしれないが、大きなアワードの授賞式が開催されたり、アーティストが移り住んだり、ヒップホップ/R&Bシーンにおいては重要かつホットなエリアとして再浮上してきている。トリックやトリーナを育てたスリップン・スライド以降はさほど新顔のアーティストが増えてはいないのだが、それでもマイアミ勢の勢いを感じるのは、優秀なクリエイターたちが同地にひしめいているからだろう。例えば、恐らくいまもっともヒット打率の高いスコット・ストーチ。彼はフィリー出身ながら、明確にサウンドの幅を広げていったのはマイアミ移住後だ。他にもクール&ドレー、ジム・ジョンシン、レッド・スパイダー、トニー・ガルヴィンら旬な面々の仕事ぶりはいまや地元に留まらない。控えめに言っても、現在の全米ミュージック・シーンを左右しているのがマイアミのクリエイター/アーティストたちだということは覚えておいてもいいだろう。

TRINA 『Da Baddest Bitch』 Slip-N-Slide/Atlantic(2000)

  まだイロモノ扱いだった頃にリリースしたエロ盛りのファースト・アルバム。レーベルのファミリーたちに加え、後に50セント周辺でブレイクするレッド・スパイダーも今作中の“Take Me”にてフックアップ。ママに捧げた“Mama”もメロウな良い曲です。

TRINA 『Diamond Princess』 Slip-N-Slide/Atlantic(2002)

  クール&ドレーの手掛けた出世曲“Told Y'all”を筆頭に、トラック面でもラップ面でも全国区対応なクォリティーに進化したセカンド・アルバム。イキのいい“B R Right”“No Panties”などのビッチ・アンセムが満載で楽しい! ジム・ジョンシンもここから抜擢。

TRICK DADDY 『Thug Matrimony: Married To The Streets』 Slip-N-Slide/Atlantic(2004)

  トリーナを見い出したトリックは今作を機にマイアミの枠を飛び越え、ついに南部を代表するリアル・サグへと昇り詰めた。ガラの悪い極太ヴォイスは迫力十分!! スリップン・スライドを離脱したらしく、次の一手も待たれるところ。

PRETTY RICKY 『Bluestars』 Bluestar/Warner Bros.(2005)

  ジム・ジョンシン&ビッグDがトータル・プロデュースを手掛ける、歌とラップを併用するマイアミのティーンズ4人組。“Grind With Me”のロングラン・ヒットによって、B2K解散でできた空席にすんなり収まった感もある。ただ、この悪ぶり方はさらなる大化け率高し!?

JACKI-O Poe 『Little Rich Girl』 Poe Boy/TVT(2004)

  トリーナが一段上のステージに移行した現在、マイアミを仕切るビッチは彼女!? フォクシー・ブラウンとのビーフも記憶に新しい女傑ラッパー。このデビュー作ではクール&ドレー、レッド・スパイダー、ゴリラ・テック、ヤング・ハリウッドら地元勢も大挙バックアップ!!

PITBULL 『M.I.A.M.I.』 TVT(2004)

  レゲトン人気にも上手く乗り、現在はバッド・ボーイ・ラティーノの運営にも関わるピットブル。リル・ジョンの陰に隠れがちではあるが、このヒット作におけるディアス・ブラザーズやジム・ジョンシン、DJナスティといった地元勢の下世話な手捌きも注目されるべきだろう。

RICKY MARTIN 『Life』 Columbia/ソニー(2005)

  なんでリッキーさん? 実はこの新作、スコット・ストーチをメイン・プロデューサーに据えたバリバリのメインストリーム仕様なのだ! カリブ風味も呑み込んでビルドアップされた今様R&Bトラック、ダディ・ヤンキーやヴォルティオらゲスト陣との絡みも文句ナシ!!

SHAGGY 『Clothes Drop』 Big Yard/Geffen/ユニバーサル(2005)

  なんでシャギーさん? かと思いきや、またまたスコット・ストーチがハイブリッドな“Don't Ask Her That”をプロデュース!! ゴリラ・テックがミス・シングを手掛けていたように、レゲエ勢との交流が深めやすいのは在マイアミ連中の特権か。

LUKE 『Somethin' Nasty』 Luke/Koch(2001)


  裏表のビジネスでマイアミを牛耳るルーク船長。この男がいなければ、マイアミ・ベースもクランクもバイリ・ファンキも現在の形では存在していなかったはずだし、マイアミ・シーンの様相も現在とは大いに異なったはずだ。なお、本作では無名時代のピットブルが抜擢されている。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年10月27日 17:00

更新: 2005年10月27日 17:26

ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)

文/出嶌 孝次

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