元祖ビッチ・ラッパーのアタシがいない間に悪さするんじゃないわよ!!
衆知のようにリル・キムは現在塀の中……刑務所にいるラッパーもいまや珍しくはない気がするけど、彼女の場合は事情が少し異なる。2001年にラジオ局〈HOT97〉の外で発生した発砲事件に関して、友人をかばうために連邦大陪審にて偽証を行ったことが判明しての有罪判決&服役なのだからして、逆に義理人情に厚いオンナとしてストリートの株を上げまくり、なのかも? で、そんなチャンスを活かすべく(?)登場したニュー・アルバムが『The Naked Truth』だ。思わせぶりなタイトルの付け方も巧いね。前作『La Bella Mafia』も凄い出来だったし、先行シングルの“Shut Up Bitch”もフリーキーで最高だけど、アルバムはそれどころじゃない! かの「The Source」誌において女性MC初の〈マイク5本〉評価を獲得したことでも話題ながら、そうじゃなくても世界中でマイクが何万本もそそり立つぐらいにカッチョイイ出来だよ、コレは!
イントロ後の“Spell Check”では、“Candy Shop”でディスってきた50セントにキッチリ報復し、以降もノトーリアスBIGの声ネタを用いたお得意の路線や、トゥイスタにT.I.といったゲストとの絡み、アソコ自慢に終始するドスケベ・チューンなどなど、トピックもビートもヴァラエティー豊かだ。特に元恋人のスコット・ストーチが手掛けた“Lighters Up”はどう聴いても“Welcome To Jamrock”のロウなノリを上手く転用したもので、レゲエ調のフロウも最高にカッコイイ!
ともかく、かつての仲間であるジュニア・マフィアを容赦なく罵倒し、銃撃事件の遠因だとされるフォクシー・ブラウンとの終わりなき確執も匂わせながら、表題で示唆するところの〈真実〉を提示した作りは実に見事。〈出所する頃にはリル・キムの名前がさらに大きくなっていることを期待しているわ〉とのコメントを残してお務めに出かけた彼女だが、そうなることは確実でしょう!
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2005年10月27日 17:00
更新: 2005年10月27日 17:26
ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)
文/出嶌 孝次