インタビュー

設立16年目にして、いまが全盛期? 絶好調のワープについて社長に質問!! 近年の注目作もリマインド!! その1

「レーベルのヴィジュアル面について、15年間の進化を見せるいい機会だったと思うんだ。プロモ・クリップは音楽の二次生産物のように捉えられがちだけど、僕はそれ自身が芸術作品だと思っているからね」。

 オーナーのスティーヴ・ベケットがそう語るように、節目を飾る映像作品「Warp Visions The Videos 1989-2004」を昨年リリースして、活動に一区切りをつけたワープ。とはいえ、音楽性の貪欲な拡大ぶりは活動16年目にあたる今年も収まらない。振り返ってみるとここ2、3年にリリースした作品のおもしろさはかつての栄光すら霞ませるほどだ。当のスティーヴはここ数年のレーベルの動きをどう捉えているのだろう。いや、それ以前にここまで手を広げていく展望を持っていたのだろうか?

「設立当初のヴィジョンは視野の狭いものだったよ。〈とりあえずダンス・レコードを作って500枚売れればいいや〉っていう感じだったからね。いまは大きな国際的企業になって、パブリッシャーや映画製作会社、映画配給会社まで持つことになった。だけど、それも15年間一歩一歩進んできた結果でね。一歩ずつは非常に小さなものだったから、とても自然にここまで辿り着いたっていう感じがするよ」。

〈小さなことからコツコツと~〉なんてどこかで聞いたフレーズも頭をよぎりますが、それだけじゃ成功しないのがこの世界の常識。主役であるアーティストを見つけ出し、リリースを決めるにあたっての信条や方針も大切な部分だろう。

「いちばんの決め手はオリジナリティーだね。すべての人間は唯一の存在だから、アーティスティックに自分を表現することができたら、何かオリジナルなところが見えるはずなんだ。で、それを音楽で表現できるということが重要。それがいちばんで、次に人として共感できるかどうかだな」。

 そんなワープのアンテナにかかったなかでも、特に気になる2組のアーティストについて尋ねてみた。まず、マキシモ・パークについては「あの契約は大変だったんだよ。当時彼らはUKきってのホットなバンドだと目されていたから、多くのメジャー企業が契約しようとしてたんだ。だけど、ダンス・レーベルとして知られている僕らと契約するのはバンドにもプラスだと思ってね」とのこと。ちなみにスティーヴは彼らの『A Certain Trigger』を「インディー・ロックのクラシック・アルバム」と絶賛! そしてワープの先見の明が発揮されたジャクソンの獲得については「興奮した。最近のダンス・ミュージックが失ったエネルギーや興奮、ロマンを持っていると感じたよ」とこちらもお気に入りの様子。最後に今後のリリース予定を訊くと「まずはバトルズが来年に控えてるんだ。あとはプラッドの映像付きニュー・アルバム。それに……」と続々登場予定。まだいろいろ仰ってましたが、あとは来年のお楽しみということで!(青木正之)

PLAID 『Spokes』 (2003)

 ブリープ、アンビエント、エスニックなどさまざまな要素を吸収した美しいサウンド。テクノの可能性を追求するプラッドの姿に美学を感じる一枚。(青木)

REQ 『Car Paint Scheme』 (2003)

 お得意の重量感溢れるビートを軸にアップテンポに仕上げたレックの快作。メロディーやラップの出来もこれまででいちばんの冴えを見せている。(青木)

!!! 『Louden Up Now』 (2004)

 ディスコ・パンクやダブ・ハウスともリンクする痛快バンド・サウンドはヘタな打ち込み音楽よりも確実に踊れる。2004年を代表するダンス・グルーヴ!(青木)

SAVATH AND SAVALAS 『Manana』 (2004)

 スコット・ヘレンの別名義によるミニ・アルバム。生楽器の比重を増やしつつも、エレクトロな部分が巧みに織り込まれた丁寧な作り。ボサノヴァ・テイストが和やかなムードを演出する。(青木)

BEANS 『Shock City Maverick』 (2004)

 元アンチポップ・コンソーティアムらしいアヴァンギャルドな変態トラックから真っ当なヒップホップまで、ビーンズ節が隅々まで浸透。豊かな才能で彩られた賑やかな一枚。(青木)

『TWO LONE SWORDSMEN 『From The Double Gone Chapel』 (2004)

 かつてはセイヴァーズ・オブ・パラダイスで、ワープにダブを持ち込んだアンディ・ウェザオール。この怪盤ではダーティー・ロック趣味を開陳。(原田)

『Warp Visions The Videos 1989-2004』 (2004)

 クリス・カニンガム、アレックス・ラタフォード、リン・フォックスらが手掛けた傑作プロモ・クリップをまとめたDVD。この成功が映像部門の始動に繋がった!?(原田)

SQUAREPUSHER 『Ultravisitor』 (2004)

 貧欲にあらゆる音を取り込むもスクエアプッシャー臭さは少しも薄まることナシ! プログラミングから生演奏まで全部こなしちゃう!(青木)

MAXIMO PARK 『A Certain Trigger』 (2005)

 テンポやメロディーが目まぐるしく変化する楽曲と意外にストレートなコーラス、そんな捻くれ具合がたまらない英国らしい仕掛けが満載!(青木)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年10月27日 18:00

更新: 2005年11月04日 18:05

ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)

文/青木 正之、リョウ 原田

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