インタビュー

MASHONDA(2)

自分に忠実であること

  〈1月の歓び〉と名付けられたファースト・アルバムは「3年かけてレコーディングして、どの曲も自分の子供みたいに丁寧に育てた。急がないで、最終的にOKを出すまで何万回と手を入れたの」と話すとおり、一分の隙もないのに伸びやかな仕上がり。「俺はR&Bのプロデューサーではないし」と謙虚に話すスウィズのプロデュースは3曲に留まり(どれも高水準だったりするが)、DJスクラッチ、マイク・シティ、ブライアン・マイケル・コックスら第一線のプロデューサーが参加。「組みたい人のリストを作って取り組んだ」とマションダが言えば、「彼女の希望に添うように、俺の知り合いに声をかけた」とスウィズ。繰り返すが、別々のインタヴューで基本的に同じ答えが返ってくるのだ。ゲストには身内のジェイダキスと、現在、客演希望リストのトップを二分しているカニエ・ウェストとスヌープ・ドッグ。フックがM.I.A.風の“Blackout”みたいな曲や、華やかなヒップホップ・ソウルもあるが、大半がちょっと甘酸っぱい正統派のミディアム・チューンで、心地良く耳を預けていられる。白眉が“Ask Of You”と“Touch Me”のカヴァー。前者は、ジョン・シングルトン監督「ハイヤー・ラーニング」のサントラに収められていた曲で、なんと本家のラファエル・サディークとデュエットしている。

「大好きな曲でいつかカヴァーしたいと願っていたの。実行に移したら、ラファエルが耳にして、自分も参加したいと言ってくれて。大喜びでLAまで飛んで行ったわよ(笑)。憧れのアーティストと組めたから、いちばんエキサイティングな曲かな。スウィズも彼の仕事ぶりを近くで見られて嬉しかったみたい」。

 音楽ファンらしい2人のエピソードだ。一方の“Touch Me”はナタリー・コールの名曲で、「歌唱力を示したかったのと、アルバムに教会の雰囲気を持ち込みたかったから選んだの。親の世代はもちろん、子供にも人気があるみたいで驚いているところよ」。

 また、〈ひとりぼっちで寂しい〉と歌う“Lonely”は実話だそうで、「彼がツアーに行っている間、家にひとりきりで仕事だけしている時の気持ちね。共感できる女性は多いと思う」とマションダ。そういえば、MTVの〈Cribs〉で紹介されていた邸宅はバカデカくて確かに寂しくなりそう……ってあの家の規模で寂しくなれる人はそうそう日本にはいませんが。こんなふうにキャリアも恋愛も、すべて上手くいっているマションダに幸せになるコツを訊いてみよう。

「まず、自分に忠実であること。男性がおかしな振る舞いをしたら、黙っていないですぐに指摘すること。そのままにすると、つけ上がるからね。でも、なじるような話し方はだめ。〈ちょっと話し合わない?〉って切り出して、正直に感じていることを話すのよ。私たちは一昨年結婚したんだけど、その前の5年間もいっしょに住んでいたの。結婚前にいっしょに住んで、どんな生活になるのかを知っておくことも大事ね」。

 なるほど。スウィズも「彼女は自分のスタイルがあって、仕事もがんばるけど、ちゃんと女性らしくしている。実は、多くの女の人が忘れていることだよね」とコメントしていた。イタタ。

 マションダは「いま私のアルバムを買ってくれた人たちが子供に聴かせる歳になって、〈若い頃、これがホットだったんだよ〉って言ってくれるようなレジェンドになりたい」と話しつつ、「5年後には4枚アルバムを出していて、2人くらい子供が欲しい。音楽のキャリアでも成功して、母親にもなりたいと思っている」と締めた。たぶん、マションダはそれを実現するだろう。ということで、2005年の目玉R&B作品にして、幸せになるエッセンスが詰まった開運グッズでもある『January Joy』。ぜひ手に入れていただきたい。
▼『January Joy』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年11月10日 16:00

更新: 2005年11月10日 18:47

ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)

文/池城 美菜子