Madonna
ミラーボールに照らされて、女王がふたたびフロアに舞い降りた! このハイパー・ポップなダンス・アルバムで、またしても世界は彼女に踊らされてしまうのか?
ダンス・ミュージックへのオマージュよ
マドンナから届いた2年半ぶりのニュー・アルバム『Confessions On A Dancefloor』は、NYのクラブ・シーンからデビューしたマドンナにとって原点回帰ともいえる作品となった。今作ではジャック・ル・コント名義でDJとしても名を馳せるスチュワート・プライスが、大部分のプロデュースを手掛けている。そもそもスチュワート・プライスは2001年の〈ドロウンド・ワールド・ツアー〉と2004年の〈リ・インヴェイション・ツアー〉で音楽の総指揮を担当していて、すでにマドンナとの間に信頼関係が築かれている。そんな2人は〈ディスコ〉というキーワードのもと、楽しみながらアルバムを制作していったと言う。
「トータルで見ると、今回はスチュワート・プライスとの仕事だったわ。彼はDJだし、アルバム全体をディスコで流れるような音楽の構成にしたかったのよ。もちろんすべての楽曲が最初からうまく繋がるタイプの曲ではないから、その曲間の部分を作る必要があったけど、それがまた楽しかった。前の楽曲の断片を引っ張ってきて繰り返したりしてね。でも、とてもクリエイティヴで楽しい作業だったわ」。
もちろんクラブ・ミュージックへの思い入れも強いようで……。
「クラブでみんなが踊る音楽っていう意味でいえば、ずいぶん発展してきたと思うわ。ひとつだけ変わらないのはベース・サウンドの大きさね。70年代末のディスコ・ミュージックといえばジョルジオ・モロダーやビージーズだった。それが80年代初頭に入ると共に大きく変わって、90年代にはよりテクノ的なサウンドが出てきて……。そういった流れは変化とも捉えられるけど、継続的でもあると思うの。今回の私のアルバムでは、それらすべての時代を採り込んで自分の音楽にしたかったのよ。つまり、ダンス・ミュージック全般へのオマージュといったところね」。
そんなマドンナの〈エレクトロニックmeetsディスコ・ミュージック〉を、スチュワート・プライスは〈フューチャー・ディスコ〉と命名。これに対してマドンナも、「あら、いいじゃない! 〈古臭いディスコ〉って呼ばれるよりよっぽどいいわよ(笑)」と歓迎する。確かにこのテのサウンドは、ダフト・パンク、ロイクソップ、ゴールドフラップ、シザー・シスターズ、それにマドンナの“Everybody”をサンプリングして“Greatest Hit”をヒットさせたアニーなど、ここ数年でヨーロッパのクラブ・シーンを中心に席巻しているもの。そして今回マドンナが珍しくサンプリングとして取り上げているのが、最新シングル“Hung Up”で使っているアバの79年作“Gimmie Gimmie Gimmie”である。
「子供の頃からダンス・ミュージックが好きで、その中でもアバは特にお気に入りのグループだったわ。チアリーダーをやっていた高校生の頃や、ダンス・スクールに通っていた時も、よくアバの曲で踊ったりした。だからあの時代の音楽へのオマージュとして彼らの曲をサンプリングするのは、ごく自然なことに思えたの。私はアバの男性メンバーであるベニー(・アンダーソン)とビヨルン(・ウルヴァース)に手紙を書いて懇願したのよ。また、現地に行ったマネージャーからも、私がいかに彼らの音楽を敬愛しているか伝えてもらった。すべて本心よ。で、彼らはしばらく考えていたわ。〈ノー〉って言われる可能性もあった。でも幸いなことに、そうはならなかったの」。
アバといえば、なかなか楽曲を使用させてくれないことでも有名なグループとして知られている。ベニーは、今回の使用について〈僕たちの曲を使いたいというリクエストは物凄く多い。でも、普通はノーと言っている。許可したのは今回で2度目。 今回イエスと言ったのは、僕たちもマドンナを崇拝しているからだ。彼女にはガッツがあるし、デビュー以来、第一線で活躍してきた。 悪いものになるわけがない。もし良くなければOKしないよ。これはいいトラックだ。100%ポップ・ミュージックだ〉とコメントを出している。
ちなみに、これまでにマドンナ以外で許可が降りたのは、フージーズが“Rumble In The Jungle”で使用した“The Name Of The Game”だけだ。
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2005年12月01日 12:00
更新: 2005年12月08日 21:41
ソース: 『bounce』 271号(2005/11/25)
文/伊藤 なつみ