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インタビュー

安藤裕子

可憐な容姿に艶のある歌声、そして色彩豊かな楽曲で注目度急上昇中の新世代女性シンガー・ソングライターによるセカンド・アルバム『Merry Andrew』が登場!!

歌いはじめた意外な理由


「ホント、大した理由じゃないんですけど」――〈歌いはじめた理由は?〉という基本的な事柄を改まって訊ねると、彼女はそう切り出して話を続けた。

「もともと映画を作りたくて、自分で脚本を書いては映画会社に送りつけたりもしてたんだけど、なかなかうまくいかなくて。で、父の友人にTV番組の制作会社の方がいたから、〈映画会社を紹介してくれませんか〉って相談してみたら、〈そういう世界を見てみたいなら出るほうでやってみたら?〉って言われたんです。で、あるオーディションを受けたときに、歌を歌わなくちゃいけないってことになって。でまあ、当時の邦楽とかほとんど知らなかったし、共感できる曲を歌いたいけど何を歌えばいいんだろう?って悩んでたんだけど、高校のときにCharaのシングルを買って、可愛いなぁ、共感できるなぁって思って聴いてたのを思い出したんですね。で、友達が持ってたベスト・アルバムを借りて、知らなかった曲とかも聴いてたら、その中にすごく泣ける曲があったんですよ。“Break These Chain”っていう曲なんですけど、これなら自分の気持ちも表現できるはずだと思って、それをオーディションで歌ったんです。そしたら、審査員の人に〈キミはさぁ、ウマいヘタ関係ないからさぁ、それでいいんだよ〉って言われて、なんかわかんないけどすごく嬉しかったっていうか、〈歌〉ってすごく立派な表現物なんだなっていうのを体感したんですね。で、自分で曲を作ろうと思って、帰って速攻、作り方とかなんも知らないんですけど、ひとまず鼻歌とかで作ってみたんですよ。まあ、自分の歌を好きって言ってくれた人がいたから調子に乗ってたっていえばそれまでなんですけど(笑)。でも、難しかったですね。自分でも〈ぷっ〉となってしまうぐらいの歌ばかりだったんですけど、それでも黙々と作り続けていくうちに、だんだんまともな曲が出来るようになって。で、初めて自分が〈うぅ~〉って泣きそうになった曲が出来たんですけど、それが“summer”という曲。その曲が出来たら楽しくなっちゃって、今度は他人に聴いてもらいたいっていう気持ちにもなって……」。

 プロフェッショナルなシンガー・ソングライターとして歩みはじめる第一歩となった“summer”を含むファースト・ミニ・アルバム『サリー』を引っ提げ、2003年の夏にデビューを果たした彼女の名前は、安藤裕子。日々、日常の幸福や憂鬱をキュートで情感豊かな歌声で紡ぎながら、温かく軽やかなサウンド&メロディーに乗せていく彼女の楽曲は、聴き手の心をさりげなく、心地良く揺らしてくれるものだ。デビュー以来、4枚のシングルと2枚のミニ・アルバム、1枚のフル・アルバムをディスコグラフィーに刻みながら、じんわりと確実にその歌声をリスナーの耳に浸透させてきた彼女だが、このたびセカンド・フル・アルバム『Merry Andrew』を届けてくれた。以前、話を窺う機会があったときに、2004年秋にリリースしたファースト・フル・アルバム『Middle Tempo Magic』までの流れを「すごく優等生だったな」と振り返っていた彼女だが……。

「そういう意味では、今回のほうが人間味あるかな(笑)。〈喜怒哀楽〉とまで激しい感情を出してはいないんだけど、なんだろう……ちょっとした苛立ちだったり不安感だったり、ふだん私が人前では示さない感じのものが、まあ。この1年、結構混沌としてて、シングルを3枚も出したっていうのもあるんだけど、ずーっと落ち着く間もなくいろいろやってたんですね。で、なんか自分で自分をまとめきれなくなってて、プリプロだったりレコーディングだったりが休息の場所のようになってたんです。曲を作るのが楽しくて、そこを捌け口としてるような生活をしてたんですね。で、曲がいっぱい出来上がって並べてみたときに、〈なんか偏ってない?〉って。結構ゆったりした曲が多くなってたんですよ。私、まだ作る曲のコントロールができなくて、技術が足らんのか、出てきちゃったものはそのまま、みたいなところがあって。自分の身体がそうなっているときは、そういう曲しか出てこないんですね。今回、サーヴィス精神的な部分がちょっと薄かった作業になったかも知れないけど、1曲1曲、作ってる最中はその曲がすごく大好きで、すごく丁寧に作っているから、作り方的には『Middle Tempo Magic』のときと差はないんだけどね」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年01月26日 17:00

更新: 2006年02月02日 19:03

ソース: 『bounce』 272号(2005/12/25)

文/久保田 泰平