インタビュー

年代別に見る、女性シンガーによる〈艶ポップ〉の系譜

 みずからの音楽性を〈艶ロック〉と呼んでいるバンドがいますが、ここでは女性として磨かれていく様をみずからの楽曲に反映させていった――安藤裕子と同じ匂いを放つ――シンガーを〈艶ポップ〉とカテゴリーし、年代別に紹介しよう。

 まずは70年代。安藤も〈声のフィーリングが似てる〉と言われたことがあるらしい、ユーミン。姓を荒井から松任谷に改めたご結婚後は、より女性らしさを楽曲に反映させ、〈OLの教祖〉への礎を築いていきました。デビュー当初はアイドル的印象もあった竹内まりやも、のちのご亭主=山下達郎のバックアップで、センスの良いポップスを量産していきました。

 80年代は、やはり松田聖子。松本隆、ユーミンら錚々たるクリエイターによって上質のポップ・ナンバーを数多く輩出し、子供じみたアイドル・ポップとは一線を画していました。そして、鼻にかかった独特の歌声だけでも〈艶〉な松本伊代。デビュー当初は〈キラキラ〉なアイドルでしたが、ハタチになって以降の彼女の楽曲は実にチャーミング。オトナへのステップをうまく駆け上ることができた希有なアイドルのひとりでしょう。

 ミリオン・ヒット連発の90年代初頭、奔放でセンチメンタルな現代っ娘としてシーンに躍り出たChara。安藤がインタヴューで〈泣ける曲〉と言った“Break These Chain”は、彼女のデビュー・アルバムに収録。女性として大きなイヴェントを経て音楽性に艶を増したシンガーは、UAやYUKIなども挙げられます。で、90年代〈艶ポップ〉名盤といえば、原田知世のスウェーデン録音盤『I could be free』。興味深いコラボレートによってみずからのセンスを磨いていった例は、ほかにも森高千里、小泉今日子などといった方が挙がります。

 2000年代。やはり代表はaikoかな。オーソドックスなバンド・サウンドと、体温すら感じとれそうなぐらい〈生きた〉歌が歌える女性は、彼女以外にナシ! 見かけに寄らずエロさもあり。そして、ソロ作品が好評だった原田郁子。シンプルで丁寧な音作りからは、彼女の女性らしい繊細さを再確認させられました。


原田知世の97年作『I could be free』(フォーライフ)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年01月26日 17:00

更新: 2006年02月02日 19:03

ソース: 『bounce』 272号(2005/12/25)

文/ヨロイ騎士

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