Chicken Lips(3)
やりたいことをやるだけだね
ダンスフロアで種々のトラックスをヒットさせてきた達成感からか、多くの曲がリスニング対応のヴォーカル・トラックとなっている。マイクを握るのはスペイン在住のジョニー・スペンサー。彼はファルセットを使い、ブルーアイド・ファンクを歌い上げる。
「ジョニーはもともとスタッフォードの出身なんだ。僕らは、確かプロプス・ワイン・バーで会ったんじゃなかったかな。80年代後半の話だけど、そこはスタッフォードで唯一、遅くまでオープンしている店だったんだよね」(アンディ)。
「『Making Faces』はダンス・アルバムであると同時にリスニング・アルバムにもしたくて。その最大のチャレンジがヴォーカルを入れることだった。やったことのないことをやりたかったんだ。そしてダンスフロアでもどこでも、どんなムードにでも変われるアルバムを作りたかった。できれば、時間とかは関係なく、どんな時にでも聴いてほしいからね!」(ディーン)。
今作では、生演奏のリズムとベースを核としたスロウなディスコ・グルーヴが中心となっている。それはかつてのディスコDJたちが愛した、ロック・バンドによる歪んだファンクを想起させる。例えばローリング・ストーンズ“Miss You”やブロンディー“Rapture”のような。
「そう聴こえたなら、それは僕らがアルバムを作っている間、70年代のロックをたくさん聴いていて、やろうとしていたことに強く影響を受けたからかな」(アンディ)。
「『Making Faces』では、前より多くのギターを使っている。意識したわけじゃなくて、アルバムの音をもっと良くしようとしていたらそうなったんだ」(ディーン)。
『Making Faces』には〈ディスコ〉や〈ニューウェイヴ〉という記号のなかに隠れている12インチ盤の影がたくさん交錯している。しかし彼らは歴史の修正作業に固執するというより、圧倒的な瞬発力で音の再構築作業そのものを楽しんでいるようだ。
「今年の9月からはチキン・リップスの4枚目のアルバム制作を始める予定なんだけど、クリエイト・モードに入ってきたね。そのアルバムでは生演奏はやってない……かもよ!? トレンドとかファッションとかは関係なく、やりたいことをやるだけだね」(アンディ)。
現在はビッグ・トゥー・ハンドレッド名義でのアルバムも制作中だというアンディ&ディーン。すでに膨大な名義と作風を誇っているだけに、今後も新たな一面を見せてくれそうだ。
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2006年03月16日 19:00
更新: 2006年03月16日 20:53
ソース: 『bounce』 273号(2006/2/25)
文/リョウ 原田