SENTI TOY
有機的に奏でられる至高のポップス……NYのダウンタウンを虜にした純白の歌声が響き渡る
北東インドはナガランド出身、ナガ族の戦士の娘にして、フリージャズのサックス奏者、ヘンリー・スレッギルの妻。それがこのセンティ・トイ。だが、そんなユニークな素顔をいっさい知らない人でも、彼女のファースト・アルバム『How Many Stories Do You Read On My Face?』を聴けばたちまち惹かれてしまうに違いない。そう、ローラ・ニーロ、キャロル・キング、ジョニ・ミッチェル、あるいはメイシー・グレイやノラ・ジョーンズらが持つような、深みと苦味と知性と包容力に裏打ちされた歌がここに静かに息づいているからだ。
「ボンベイの大学で哲学を勉強し始めてから初めてジャズを聴いたんだけど、その時、私のイマジネーションは一気に広がったの。ただ、いまの私は本当にいろいろなジャンルの音楽に影響を受けているわ。ソングライティングのノウハウも自己流でギターを弾いて作ることもあるけど、ほとんどは頭の中に思い浮かべながら曲を作っているのよ」。
現在38歳と決して若くはないが、夫であるヘンリーの作品などに参加しながら着実にスキルとセンスを磨いてきた。それだけに、ブランドン・ロスやフェルナンド・ソーンダース、NYのラテン・ユニット=ジェルバ・ブエナのヴォーカリストでもあるシオマラ・ラウガーら大勢の仲間が今作に参加しているのは不思議ではない。しかし、何かに染まることを拒むような純白で瑞々しい彼女の歌声こそがやはり本作における主役。故郷ナガランドの伝統音楽をジャズやフォークの洗礼を受けたそのサウンドの中に忍ばせても、やはり彼女自身の理知的な歌声は一筋の光のように凛と貫かれている。
「夫も含めた優れたミュージシャンに囲まれていることがプレッシャーになることはないわ。夫は私を自由に音楽作りに向かわせてくれるし、子供の頃からオモチャのギターに合わせて歌ってきた私自身のアイデンティティーがいまでもすべてだと思っているから」。
ナガランドの民族性を必要以上に意識することもないと言うセンティ。現在はニューヨーク大学でエスノ音楽の研究もしているそうだが、彼女の澄んだ瞳はもっと広いスパンで音楽そのものを見つめている。
「もちろん、ゆくゆくはナガの音楽がどのように変化しているのかを理解したいわ。植民地化や伝道化のせいで、西洋の音楽に支配され、私はナガの音楽にまったく触れずに育ってきたから。でも、私の音楽はやっぱりポップ・ミュージックだと思う。私にとってポップ・ミュージックは昂揚させてくれるもの。正しい音のコンビネーション、アレンジ、想像力があればそれで十分なのよ」。
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