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インタビュー

SENTI TOY(2)

bounce.comオリジナル、センティ・トイのインタビュー完全版を掲載!


――アルバム『How Many Stories Do You Read On My Face?』、素晴らしかったです。初めてあなたの歌を聴きましたが、一発で惹かれてしまいました。そこで、今回はあなた自身のことをいろいろと聞かせてください。あなた自身は現在何歳なのですか? また、北東インド、ナガランド州出身とのことですが、なんでも多くの部族が住んでいるそうですね。あなたの部族=アオはどのような文化的特徴がある部族なのですか?

「詩野さん、ありがとう。私は38歳ということになっているけど、まだ17歳の気分です。私の部族は、他のナガの部族とそんなに変わりませんよ。みんなそれぞれに特別の意味をもった肩書き、言語、料理、音楽などがあります。人に関していうと、ナガの人達はフレンドリーで温かい人たちです。アオ特別の特徴は思い浮かばないわ」

――あなたのお父様は日本の東芝にも研修に来たことがあるエンジニアだそうですが、あなた自身も高校卒業後はボンベイの大学に進学するなど、知識階級の高そうな地域なのかと想像できます。アオ族を含めたナガランドからは大学に進学したり欧米に勉強しに留学するような人も多いのですか?

「そうですね、ここでは若い子たちは学校に行くことを強く勧められます。恐らく他のインドの場所に比べると、読み書きが出来る割合はかなり高いと思う。ただインド政府は公的には、私たちのことを〈インドの後退した部族〉と呼んでいますね。ほとんどの人達はナガランドの大学に行くのですが、金銭的に余裕のある人たちはデリー、バンガロー、ボンベイなど他のインドの地域にも行っています。海外に勉強しに行く人はあまりいません。でもナガランドの村には学校に行く必要性を感じず、西洋で言う〈知的である〉ということに無関心な農家もいて、そういう人達は地球、そして収穫のことに関心を抱いています。より良い仕事に就くために、高い教育を志す人のほとんどは都市部にいる若者たちです」

――あなたは大学でインド哲学を専攻したそうですが、卒業後はCM音楽などを作る仕事についたようですね。哲学専攻だったのに、なぜ卒業後に音楽の仕事を?

「それは意図したものではありません。そこに転げ落ちたようなものです。私の友達が、TVCMのプロデューサーのアシスタントをしているのですが、スタジオを見学したくてついていったら、彼らがジングルを録音する(〈Close-up〉の歯磨き粉の!)ところでした。すると音楽プロデューサー(インドではとても有名なミュージシャンであるルイス・バンクス)が私を誰だか知りたがり、プロデューサーのために仕事をしているのかと聞いてきたのです。彼に、私も少し歌うしプロのスタジオというものを見たくて来ましたと伝えたところ、なぜか彼は乗り気になり、即座にジングルのメロディーを弾き出し、〈録音ブースの中で歌ってきて〉と私に言いました。そして私が歌って出てくると彼は黙ったままでした。すると彼は私にそのジングルを歌ってほしいと言い、将来の仕事のために電話番号も教えてほしい、と。それが、始まりでした。彼は毎日のように、よく電話をくれるようになりました。お金もとてもいいし、ミュージシャンも素晴らしかった。彼らは音楽のみならず、色んなことを知っていて、私は彼らと付き合っていることをとても嬉しく思いました。しまいにはルイスが、彼のためにスタジオでブッキングなどの仕事をしてくれないかと頼んできて、またジングルを歌うためにも常にスタジオの周りにいるようになりました。

それがフルタイムの仕事になった瞬間です。私は、自分がジングルを歌うなんて思ってもいませんでした! 私は、プロのシンガーが毎日高価なデモを持ってスタジオに来て、どうにもならない様子を見ていたのでとても運が良かったと思います。本当にラッキーでした。そしてとても楽しかったです。

私はミュージシャンたちと付き合う中で、多くのことを学びました……色んな音楽について。ジングルは、私たちの人生の中では付随的なものですが、それで私は生計を立ててたのです」

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年03月16日 00:00

更新: 2006年03月16日 19:36

ソース: 『bounce』 273号(2006/2/25)

文/岡村 詩野

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