インタビュー

Jamie Foxx(3)

音楽では好きなことができる

 収録曲はスタイルもサブジェクトもさまざま。なかでも“I Don't Know You Anymore”は彼の現在を歌ったような内容で、スターらしい苦悩を滲ませたものだ。

「昔のキミはどこへ行ってしまったの? オレの知ってたキミは……っていう曲なんだ。これは俺だから歌える曲だと思うよ。映画のセットやスタジオに行くと、〈アイツは成功して人が変わったんじゃないか?〉って目で見られるんだ。俺は昔のまま、変わっちゃいないんだけどね。反対に、俺が稼ぐようになると、俺の前で急にオシャレしたりする女の子もいる。これはマイク・シティが書いた曲だけど、いまの俺の人生そのものさ。どんなことがあっても変わらずに接してくれる人が必要なんだよ」。

 そういった心情の吐露も含めて、ジェイミーにとって音楽は自己表現のための手段なのかもしれない。「常に音楽にインスパイアされる」という彼はフェイヴァリット・アーティストについてこう説明する。

「テディ・ライリーは重要だよね。ニュー・ジャック・スウィングを広めて、ゴスペルのコードを採り入れたりして。いまならカニエ・ウエストやジェイ・Z、ベイビーフェイス……。ヒップホップにもかなりインスパイアされるよ。若い頃の気持ちですべてを吸収するように聴くんだ。……音楽は自由に好きなことができるから〈Unpredictable(予想不能)〉なのさ。すでに引かれたレールの上を辿っていくわけじゃないからね。いまは“Slow Jamz”や“Unpredictable”“DJ Play A Love Song”のような曲を自分のトレードマークにしたいと思ってるよ。スロウ・ダウンしたヒップホップ/R&Bスタイルでね」。

 こういった発言を見てみると、彼がどんなに成功しようともシンガーとしての自身を大切にキープしてきた意味もわかるような気がしないだろうか? 恐らく次のアルバムまでは今回ほど待たされることもないだろう。アクターとして次のステージへと進んだ彼は、シンガーとしても新しい扉を開いていくに違いない。

▼『Unpredictable』に参加したアーティストの作品

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年03月23日 17:00

更新: 2006年03月23日 23:38

ソース: 『bounce』 273号(2006/2/25)

文/出嶌 孝次