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インタビュー

Yeah Yeah Yeahs

奇抜なセンスとダイナミックなサウンドはそのままに、そこに安定感も加わった無敵の一枚!


 シーンへの復帰を高らかに告げる先行シングル“Gold Lion”で、惚れ直した人も多いのでは? この曲一発で、〈ポスト・パンクの未来の鍵はやっぱり彼らが握ってたわけじゃん!〉と妙に納得したりもするのだけれど、いやいや、それだけではなかったことを教えてくれるのが、このセカンド・アルバム『Show Your Bones』だ。ヤー・ヤー・ヤーズの〈壊れたマリオネット〉ことヴォーカル担当のカレン・O(以下同)は、こんなふうに語っている。

「ていうか、前作を出した時の私たちって素人も同然。演奏どうこうよりもパフォーマンス・アートとしてステージに立っていたのよね。だから吐き出すものも多くて、怒りの要素が大きかった。まだ若かったっていうのもあったしね、アハハハ! でも、いまじゃ落ち着いているし、第一、毎晩あんなステージをやってるほうがどうかしてるっていうか、辛くなってきちゃったのよね」。

 どおりで新作では以前ほどシャウトしていないカレン。もちろん、ムンクの〈叫び〉みたいになってしまう瞬間もあるけれど、なんだかふくよかで、クリッシー・ハインドのようにロックならではの母性を感じさせる部分も少なくない。

「そうね、内面を見つめることが多くなったかしら。以前は刺激的なものばかりに目が行っていたけど、いまは自分自身をじっくり見詰めることが多くなったわ。それにはNYからLAに引越したってことが少なからず影響しているんじゃないかしら。ちょっぴり勇気が必要だったけどね(笑)」。

〈えっ、もうNYのバンドじゃないわけ?〉と思うかもしれないが、バラバラになった3人がふたたび集まった時に、それぞれおもしろい要素を持ち寄ったからこそ、前作とはひと味違う作品に仕上がっているのだ。

「実際には喧嘩ばっかりしていたわ。でもそれぞれのメンバーが何か新しいことを持ち帰ってきたの(笑)。キャンプファイアにピッタリな曲もあれば、タブラを使ったヒッピーっぽい曲もある。でも、だからといって既成概念に当てはめようなんて気持ちはまるっきりなかったけどね。私たちの〈らしさ〉は、ありきたりじゃないところだと自覚しているわ」。

 あのイキそうでイカせてくれないギリギリの焦燥感はそのままに、ちょっぴり安定感をものにした今回のヤー・ヤー・ヤーズ。〈ギミック狙いのまがいモノ〉なんて過小評価していた人は、ギャフンと言わされる覚悟でどーぞ。
▼ヤー・ヤー・ヤーズの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年04月13日 02:00

更新: 2006年04月27日 19:46

ソース: 『bounce』 274号(2006/3/25)

文/村上ひさし