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インタビュー

Christina Milian

最高の出会いから生まれた最高の恋とアーティストとしての成熟──過去最高の仕上がりとなった『So Amazin'』で、その情熱的な歌声がいよいよ開花する!


まったくクリスティーナ・ミリアンには会うたびに驚かされる。最近の若い女性シンガーで、これほど明け透けに特定の相手との恋愛を語る人がいただろうか。弾む気持ちを抑えきれない、いつにも増して饒舌なインタヴュー。まるで〈新作について話すには避けて通れない〉と言わんばかりに口を開いた。

「いま、ドレーと付き合ってる。とってもとっても素敵な人」。

 2年ぶりの通算3枚目『So Amazin'』を全面プロデュースしたのはクール&ドレー。ドレー、つまり身長2mの巨男のほうが、クリスティーナの恋人である。彼女はひとしきりのろけた後、彼とのなれそめを語りはじめた。

「最初は付き合うなんて思いもしなかった。失恋したばかりだったから、〈これからは仕事をがんばるぞ〉って気合いが入っていて、ちっとも恋愛モードじゃなかったの。それがマイアミでの制作を通じてだんだん癒されて……新しい愛に発展していった。だからおかしなことに、この作品には失恋を経験した私と、新しい人生を謳歌する私が共存してるのよ」。

 クリスティーナがドレーに心奪われた理由は、アーティストとプロデューサーという関係で濃密なコミュニケーションを図ったことが大きい。強固な信頼関係を築けたおかげで、彼女は初めて自分の殻を破ることができたと話す。

 「プロデューサーとしての彼は理想的なの。恋人だってこととは関係ないのよ。だって彼が私を恐れから解放してくれたんだもの。私はずっと自分をさらけ出すことを怖がってた。リスナーを自分の人生に招き入れるのって、時に怖いものよ。でも彼と人生について語り、私は心を自由にできたの。最近の失恋、その前の彼の話、貧しかった生い立ち、とにかく全部話したわ。彼は私を深く理解してくれた。リアルな部分こそが心に響くものなんだってわかった。今作にコンセプトがあるとしたら〈自分に正直に本当の私を伝えること〉ね」。

 思えばデビュー当初の彼女は可愛らしくてあどけない、アイドルのような親しみやすさを放っていた。しかし、2004年の2作目『It's About Time』で大胆に変貌。セクシャルな歌詞にも挑戦し、女性としての成熟をアピールした。ただ、それはやはり、素の自分とは言い切れないものがあったのだろう。

「必ずしも私が気に入った曲ばかりではなかった、それは確かよ。イメージ作りのための音楽には正直ウンザリしているわ。でもいまは背伸びなんかしたくないし、ただ自分を表現したいだけ。いままで何かが欠けているなって感じていたけど、そういう意味では今作ほど満足のいくアルバムは初めてなの。メッセージのある、みんなとちゃんと対話できるアルバムだからね。本当に素晴らしい(So Amazin')わ。新作の出来、いまのポジティヴな心境、環境……このタイトル以外考えられなかった。結果がどうであれ、その思いは変わらない」。

 旬なラッパー、ヤング・ジーズィを迎えたドラマティックなシングル“Say I”をはじめ、エモーショナルなヴォーカルと裸の言葉で聴き手をグイグイ引き込んでいく曲が多い。クール&ドレーらしいアーバンな音で、複数の制作陣が携わった前作より統一感がある。ドレーがラッパーとして参加した2曲での愛のコラボーションも聴きどころだ。ヴォーカルも驚くほど伸びやかで、あきらかに上達している。

「前作より10段階くらい上達したでしょ? いままでは〈なかなかイイじゃん〉っていう感じだったかもしれないけど、今作では〈誰!?〉って思うはずよ。きっと誰も私が歌っていることに気付かないわ。それもクール&ドレーというビッグなサウンドの持ち主のおかげね。存在感を出さないと音に負けちゃうもの!」。

 24歳にして出会った愛が、女性として、表現者として彼女を大きく開花させていた――。
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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年04月27日 21:00

ソース: 『bounce』 275号(2006/4/25)

文/梅岡 彩友美