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インタビュー

Caravan (J-Pop)

ギターを抱えて一人旅を続けてきた男が、道中で出会った仲間を招いて新作を完成させた。〈放浪〉と名付けられたその作品は、あなたに優しい風を運んでくれる……

変わらないために変わり続ける


 「〈変化することはいけないことなのかな?変わってしまうのはなにかを裏切ることなのかな?〉と思い込んでいた時期があって。それが逆に、生きていれば変わることが普通だし、変わることにより変わらないものが見えてきたりするって気付いて……そこから吹っ切れたんですよね」。

 3枚目となるCaravanのニュー・アルバム『Wander Around』。この作品に収録されている僕の大好きな曲“changes”の1節に〈変わり続けるのさ/変わらないために/空に漂う雲のように。流れ続けるのさ/流される前に/風に逆らう鳥のように。ゆっくり静かに/感じたままに/必要なものは力じゃなくて勇気さ。しっかり確かに/心のままに/大切なものは時間じゃなくてイメージさ〉とある。本当は歌詞の抜き出しではなく、彼の歌とメロディーと音楽、そのすべてをひっくるめてここで伝えられたら素敵なことなのだけれど、勘弁してください。とてもシンプルでストレートで、まるで生きていくことに対する決意表明のようでもある歌詞が、泥臭さと洗練が絶妙にブレンドされたCaravanならではのサウンドと、少しメランコリックなメロディー、そして歌声に乗って聴こえてくる。それはまるで、〈自分の心の中の声、すなわちそうありたいといつも思っていた気持ちが音楽になって聴こえてきた〉という感じなのだ。

「これまでにアルバムを2枚リリースしてきたけど、それらは〈自分だけで完結させちゃいたい〉〈他人が入ることで変わってしまうのは嫌だな〉と思う部分があったんですよ。でもいまは、人としての佇まいやミュージシャンとしてのあり方に共感できる人たちがまわりにいて、そういう人たちに参加してほしいと思えるようになってきたんです。そうして制作したのが、レーベルを移籍して最初にリリースしたシングル(“DAYDREAM”)だったんですよ」。

 一期一会……かも知れない人と人との出会い。偶然に出会っては別れての繰り返し。だからこそ、その瞬間がかけがえのないものであるのだし、一期一会かも知れないと思うからこそ、〈想い〉のようなものがイメージとして記憶に刻まれていくのかも知れない。彼の作る音楽が孕んでいる空気感に──そのなかに感じるメランコリックな感傷や、毅然と風の中に佇んでいるような雰囲気も含めて──僕はひとりの人間としてとても共鳴できる部分や理解できる部分が多い。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年05月18日 18:00

更新: 2006年05月18日 20:36

ソース: 『bounce』 275号(2006/4/25)

文/鈴木 智彦