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インタビュー

フルカワミキ

元SUPERCARの紅一点、フルカワミキからファースト・ソロ・アルバムが到着! 万華鏡のようにカラフルでキラキラ輝くフルカワ流ポップスの世界へご案内します!!

私の世界が始まってるっていう感じ


 昨年2月のSUPERCAR解散から1年4か月、今年6月にシングル“Coffee & Sing-ingGirl!!!”でソロ・デビューを果たしたフルカワミキ。彼女から届けられたエレクトリック・ダンス・ポップ・チューンは、彼女の新たな旅立ちを告げるに相応しいナンバーだった。そして、このたび記念すべきファースト・アルバム『Mirrors』がリリース。SUPERCAR時代もリード・ヴォーカルを取ることはあったが、ほとんどの楽曲をみずからが手掛けて歌うというのは初めてのこと。彼女はアルバムを制作するにあたって、どのような考えを持っていたのだろうか。

「やりたいこと……つまり理想とか、音楽観っていうのはあったけど、自分でもどこまでできるのか未知数だったから、とりあえず音遊びのところから楽しみたいな、と思って曲作りを始めたんです。メジャーでのリリースってことやポップ・ミュージックというものに対して、自分のできるアプローチはしたいっていうのが頭の片隅にはあったけど、特に音をこうしようとかも考えずに作っていきました。何も考えない状態のほうが、いままでの経験や価値観も自然と滲み出てくるだろうし。どんな曲が出来るんだろうって興味から始めた感じですね。それを自分でも聴いてみたかったから」。

 彼女はPCやベース、ギターを使い、ひとりで曲作りをしたという。まずは〈自分探し〉という、本当に1歩目からスタートを切ったわけだ。そうして出来た素材を元にレコーディングを開始。プロデューサーである益子樹をはじめ、勝井祐二、芳垣安洋といったROVOの面々に、盟友である中村弘二、そして七尾旅人やナスノミツルといった、彼女が尊敬する強者アーティストたちとの共同作業は、アルバムのサウンドをより強靭なものにしていった。

「自分から出たメロディーを良い演奏と良い音でパッケージするということは、最初に出すアルバムの基本としてやりたかったんです。みんなすごく良いプレイで、自分が提示した楽曲の世界観やメロディーラインを、より深いものにしてくれました」。

 そんな本作はギター・ロック然とした“OVER YOU”で幕を開けるが、この曲はまるでSUPERCARとソロ・アーティスト=フルカワミキを繋ぐかのような曲でもある。

「アルバム全体をここから始まる世界にしたかったから、この曲をまず歌わないとな、って。心機一転っていうのもあるし、シンプルなギター・サウンドも好きだし、っていう両方の思いが詰まってます」とフルカワ。エレクトロニックなダンス・ビートが印象的な“世界のささやき”、ビートレスでヴァイオリンの音色が静かに響く“Rain song”、シンセ・ベースとアコースティック・ギターが淡い空間を作っていく“I♡U”と、アルバムの曲が進むにつれて、彼女の作り出す新たな世界観が広がっていく。

「“I♡U”は、馬が走り抜けていくようなイメージで作ったんです。人って誰でも、ボーッとしながら現実と隣り合わせの世界に思いを馳せる瞬間ってあるでしょ? もう私の世界が始まってるっていう感じです(笑)」。

 ストリングスが壮大な空間を演出する“Freedom leaf”。シングル曲“Coffee & SingingGirl!!!”に続く“7STARS”では、90年代のシューゲイザー・バンドによるサウンドからノイズを抜いたような、ギター・ロック・サウンドが聴こえてくる。そしてエレクトロニカ風のトラックにギターとヴァイオリンが絡み、幻想的な世界を作り出している“Mutter of Metal”はナカコーこと中村弘二の作曲だ。ピアノとジャジーなドラムがクールな“ALABAMA”、跳ねたビートがニューウェイヴ的な“Chick, Shick Radio”、エレクトロニックな音色でじわじわと広がりを見せていく“Step by step”とさまざまな表情を見せる楽曲が続くと、ナカコー作曲のラスト・チューン“Sunburst”に辿り着く。ハードに歪んだギターと明るいメロディーラインが夜明けを連想させるこの曲は、〈ここからまた次へと繋がっていくんだ〉という、彼女の思いを感じさせるナンバーだ。
▼『Mirrors』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年07月27日 21:00

ソース: 『bounce』 278号(2006/7/25)

文/土屋 恵介