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インタビュー

AMUSEMENT PARKS ON FIRE(2)

僕がやりたいことと同じことをやってる!

 マイケル・フィーリックがソロ・ユニットとしてAPOFの活動を始めた当初、彼はまだ15歳だった(現在21歳)。驚くべきことに(いや当然かもしれないが)彼はマイ・ブラディ・ヴァレンタインを、ライドを、そしてシューゲイザーという言葉すら知らなかったのである。

「僕自身、僕らのサウンドはシガー・ロスとか、そっち方向だと思っていて……。シューゲイザーって周りから言われても、〈そもそもシューゲイザーってなに?〉って感じだったんだよ。僕がマイブラを知るまでには長い道のりがあって、実はファースト・アルバムを作った後に彼らの作品を初めて聴いたんだ。その時、〈僕がやりたいことと同じことをやってる!〉って思ったんだよね」(マイケル・フィーリック、ヴォーカル/ギター:以下同)。

 凄まじいギターのフィードバック・ノイズが吹き荒れる轟音の中から、神経質なほど繊細でポップなメロディーがストリングスやピアノの旋律と共に浮かび上がる──知らず知らずのうちに完璧なシューゲイザー・アルバムとなっていた前作『Amu-sement Parks On Fire』に続き、2枚目となるニュー・アルバム『Out Of The Angeles』には、彼がリスペクトするシガー・ロスのメンバーが深く関わっているそう。

「アイスランドにあるシガー・ロスのスタジオで今作を仕上げたんだよ。本当に素晴らしい体験だった! 彼らからはいろんなインスピレーションを受けたね。ビジネス的なことから音楽的なこと、そして彼らの地元での活動とかさ」。

 今作で聴けるチェロ・ボウの奏でる蟲惑的なギター・サウンドは、シガー・ロス直伝のものらしい。しかし彼らのサウンドはシガー・ロスとは微妙に違い、幾重にも折り重なったギター・サウンドやトロけるようなメロディーなど、より原初的なシューゲイザーの多くに類似点が見い出せる。直接的にシューゲイザーの影響がないとすると、いったいどこにそのルーツが潜んでいるのか? さらに詳しく訊いてみた。

「僕のお父さんがプログレのレコードをコレクションしていたんだ。すごい数のね! それこそ、エマーソン・レイク&パーマーやキング・クリムゾンとか。毎日そうしたレコードを聴いて楽しんでいたよ。特に12インチのパッケージはマジカルだったね。まさに、現実逃避(笑)! 特にリスペクトしているのはピンク・フロイドかな。彼らって、どこからやって来たのかわからないくらい個性的じゃない? しかも、完璧に完成された作品をクリエイトしていた。大きくインスパイアされてるよ。その後、ソニック・ユースやニルヴァーナ、あとギターウルフといったバンドを聴くようになったんだ。そして、これらのロック・バンドから音楽的なスタンスを学ぼうとしたんだよ」。

 プログレの壮大さとUSオルタナ~グランジ、そしてギターウルフによるノイズ衝動との激突によってAPOFのサウンドが生まれたとは……自分で質問しておいてなんだが、意外!

「ギター・ノイズはオーケストラなんかよりも簡単に利用できて、しかもお金もかからないよね。そしてなにより、リアル! そんな感じがするよ。ギターを使ってロックを演奏する、こんなに楽しいことはないんだから」。

 湧き上がる衝動を文字どおりフィードバックさせた結果、イデオロギーとしてのギター・ノイズではなく、極めて現代的なドライな感性が導き出したアイデアとしてのフィードバック・ノイズが生まれた。どうやらこれが、いまのシューゲイザー・ブームの本質のようだ。これらは過去のものと同じようでいて、実はまったく新しいシューゲイザーと言えるだろう。最後の質問は、当然来日公演について。否が応でも期待が高まる〈サマソニ〉での初来日を目前に控えた彼に、日本の印象を訊いてみた。

「日本と言えばコーネリアス! 彼は本当に天才だと思うよ。彼と共演してみたいね。彼の母国で彼と共演する、これほど素晴らしいことはないんじゃないかな? 日本に行くことに本当にエキサイティングしているよ!」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年08月03日 21:00

更新: 2006年08月04日 12:25

ソース: 『bounce』 278号(2006/7/25)

文/冨田 明宏