インタビュー

〈シューゲイザー〉っていったいなんなのよ!?

 90年代初頭に巻き起こったシューゲイザーとは、ジーザス・アンド・メリー・チェインを源流とするムーヴメントのことで、〈Shoe=靴+Gazer=見る人〉をいう意味そのままに、下を向きながら轟音ギターを掻き鳴らすUKロックの一部分の総称。轟音ギターと言ってもただうるさいだけでなく、幾重にも重なったフィードバック・ノイズの荒波の中にある繊細なメロディーや、深いエコーとリヴァーブの掛かったヴォーカルなど、浮遊感溢れるエンジニアリングも特徴のひとつで、〈メランコリック〉〈憂鬱〉という内省的な言葉がキーワードになっていた。時代的にも音楽的にも近しいシーンであった〈ハッピーヴァレー〉や〈マッドチェスター〉と同様の不思議なジャンル名は、メディアがでっち上げたジャンルというのが一般的な見解で、当時のアーティストのインタヴューでも怒りを伴った発言がたびたび聞かれた。

 ともあれ、そんなシューゲイザー・シーンの代表的なアーティストには、90年代だけでなく20世紀を代表する名盤のひとつ、『Loveless』で確固たる地位を築いたマイ・ブラディ・ヴァレンタインを筆頭に、立て続けにリリースしたシングルにより一気にシーンの中心に躍り出たライド(メンバーだったアンディ・ベルは現在オアシスのベーシスト)、長らく廃盤でプレミアのついていた名盤『Whirlpool』が今年ついにリイシューされて話題を呼んでいるチャプターハウスが挙げられる。このあたりのバンドは〈シューゲイザー御三家〉と言っても差し支えないだろう。他にも、スロウダイヴやラッシュ、ペイル・セインツ、スワーヴドライバー、ブラインド・ミスター・ジョーンズ、カーヴといったバンドがこのシーンを賑わしていた。

 そして90年代の日本でも、〈新世代バンド〉なんて呼ばれ方でフォロワー的なバンドが数多く出現。PAINT IN WATERCOLOUR、WHITE COME COMEといったバンドが人気を集めたほか、マンチェスター~インディー・ダンス寄りではあるものの、まさかの再結成を果たして今秋には新作までリリースする予定のVENUS PETERが当時の日本のシーンでは代表格とされている。下北沢のZOO、吉祥寺のBAR DROP、恵比寿のCOLORSといったクラブでも、週末ともなればかなりの人数が押し寄せて大盛り上りを見せた。

 その後、ニルヴァーナなどのUSグランジ・シーンが台頭して、次第に勢力は衰えていく。しかし、ムーヴメントとしては非常に短命であったものの、前述した『Loveless』を筆頭に、現在活躍するエレクトロニカ系のアーティストなどがその影響を公言しているのも興味深い。
▼関連盤を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年08月03日 21:00

更新: 2006年08月04日 12:25

ソース: 『bounce』 278号(2006/7/25)

文/ビグフォン

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