インタビュー

AMUSEMENT PARKS ON FIRE

新たなシューゲイザー=ニューゲイザーが盛り上がりを呈している。ギターの轟音と煌めくメロディーを潜り抜けると、そこには未知なる桃源郷が広がっていて……

ニューゲイザーの夜明け


 最近、〈シューゲイザー〉という言葉を耳にする機会が増えてきた。それがいったいどのような音楽を指すのか、まったく見当もつかない若いロック・リスナーが増えている状況であるにも関わらず。シューゲイザーと聞いて懐かしいと感じるのは、80年代後期~90年代初頭のUKロックをド真ん中で聴いていた世代、恐らく30代前半から中盤くらいの年齢の方々だと思う。マイ・ブラディ・ヴァレンタインやライドらが牽引し、数え切れないほどのフォロワーを生んだ、フィードバック・ノイズによる幻想的で耽美な轟音ムーヴメントも、90年代半ばにはすでに死語と化してしまっていた。

 そんなシューゲイザーではあるが、実はある国で新しい形へと変化し、進化の道を歩んでいたことを皆さんはご存知だろうか? その国とはアイスランドである。シューゲイザーの幻想的で官能的なノイズ表現は、アイスランドの神秘的な大自然と共振して、かの地の人々に新しい感性を呼び起こした。例えばシューゲイザー・マニアとしても有名なムームのメンバーは、シューゲイザーからの影響をエレクトロニカに変換して、幼児の無邪気ないたずらのような有機的ノイズで心象風景を描き出した。そのムームに限らず、エレクトロニカのアーティストは自身のルーツとしてシューゲイザー・バンドを挙げることが多い。そして、アイスランドの至宝=シガー・ロスに至っては、シューゲイザーの方法論に則ったサウンドを構築し、ストリングスやチェロ・ボウを使用したギター奏法で、オーロラや氷に覆われたフィヨルドの如き荘厳なサウンドを生み出している。その他にもシンガポール・スリングやマイス・パレードなど、枚挙に暇がないほど独自の解釈によるシューゲイザー・フォロワーがアイスランドには存在するのである。そんな足跡を辿りながらもちょっとずつ進化を繰り返してきたシューゲイザーは、発祥の地であるUKに生まれたひとりの青年によって、いま〈無意識〉のうちにふたたび大きなムーヴメントを形成しつつある。少々前フリが長くなったが、ここでようやく本稿の主人公にしてネオ・シューゲイザー(=ニューゲイザー)・ムーヴメントの最重要バンド、アミューズメント・パークス・オン・ファイア(以下APOF)の登場だ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年08月03日 21:00

更新: 2006年08月04日 12:25

ソース: 『bounce』 278号(2006/7/25)

文/冨田 明宏