インタビュー

THE GOOD, THE BAD & THE QUEEN

何が善で、何が悪か──社会の欺瞞を問うデーモン・アルバーンの新プロジェクトが始動!


 現在のデーモン・アルバーン(ヴォーカル)は驚くほどのびのびと活動している。ゴリラズが世界的に大成功を収めたことも弾みになったのだろうが、またもや新たなユニット(プロジェクト名は公表されていない)としてアルバムを出してしまった。それが『The Good, The Bad & The Queen』。

 とにかくメンバーが強力だ。デーモン以下、サイモン・トン(ギター)、トニー・アレン(ドラムス)、ポール・シムノン(ベース)。それぞれの詳細については別稿を参照してもらうとして、「国籍も世代も音楽的バックボーンも異なる4名が集まったこと自体がまず奇跡的だし、だからこそ生まれたボーダレスなサウンドにこそマルチ・ナショナルなロンドンらしさがすでにある」とデーモン(以下同)は話している。

「この5~6年、僕は本当にいいレコードを続けて作ってこれたと思っていて、その水準を維持していくのがいまの僕の責任だって感じてるんだ。最初トニーとサイモンといっしょにナイジェリアのラゴスでいくつかセッションしてみたんだけど、残念ながらその時の音源は水準には至ってなかった。とりあえず音を出したものの、気持のうえでちゃんとしたものだっていう感じがしなかったんだよ。だからロンドンでやり直すことに決めたんだ。そして最後にポールが入ってきて、初めて〈これだな〉っていうレコードが生まれたわけさ」。

 アルバムのプロデュースを担当したのは、ゴリラズの『Demon Days』に続いてデンジャー・マウス。決して派手な作りの作品ではないし、メロディアスなナンバーが揃っていることから内省的な印象さえ受ける。しかし、英国内部から眺めた英国的な在り方に一石を投じ、あくまで世界を視野に入れたような歌詞からは、『Sandinista!』の頃のクラッシュを思い出す人も少なくないだろう。ふたたびデーモンは語る。

「“80's Life”って曲はサッチャー主義を扱った歌だし、“Green Field”も〈いったい誰が緑の野原を石に変えた〉っていう政治的な曲だ。組織に対する抗議の声だね。もちろん人のことは言えないよ、俺自身がこの欺瞞の一部だと思っているし。でも、いまのイギリスは魂ってものが失われてしまった感じがするんだ。俺の国がイラクに対してやったことなんて、絶対に許せない。そして兵士はとても気の毒だと思うんだ」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年03月15日 19:00

ソース: 『bounce』 284号(2007/2/25)

文/岡村 詩野