インタビュー

T.I.

ヒップホップ界の帝王が、自らと対峙したエンターテイメント大作を発表!!

オレに相応しい競争相手は……


  「デビューした頃に比べるとずいぶん遠いところにまで来たけど、この成功はオレにとってはまだまだ小さなものなんだ」。

  昨春のアルバム『King』のリリースに端を発するT.I.の活躍にはすさまじいものがあった。通算4作目となる『King』はリリース第1週目に52万枚のセールスを上げて軽々と全米チャートを制すると、シングル“What You Know”(同曲はRolling Stone誌の〈2006年の100曲〉で第4位、VIBE誌ではソング・オブ・ジ・イヤーに選出されている)のロングセラーも相乗効果となって、最終的にはアメリカだけでも170万枚を超えるセールスを達成。ヒップホップ・アルバムとしては2006年の最高セールスを記録した。彼の快進撃はこれに留まらず、ジャスティン・ティンバーレイクの“My Love”やR・ケリー“I'm A Flirt Remix”に代表される数々の客演仕事、グラミーでの2部門受賞を筆頭とする各アワードでの好成績、ヤング・ドロー“Shoulder Lean”の全米TOP 10ヒットを送り出した主宰レーベル=グランド・ハッスルの躍進、映画「ATL」や「American Gangster」での銀幕への進出、シボレーのTVCMへの抜擢など、派手なトピックは枚挙に暇がないほどだ。T.I.はデビュー・アルバム『I'm Serious』収録の“Grand Royal”で〈I'm the king of the motherfuckin' south〉と豪語して以来、『Trap Muzik』での“King Of Da South”、『Urban Legend』での“Tha King”、自身のクルーであるPSCの『25 To Life』における“I'm A King”と、キャリアを通じて〈キング〉という言葉に強い執着心を示してきたが、ここまでくればもう自分から声高に〈キング〉を喧伝する必要もないだろう。王座が彼の手中にあることは、もはや誰の目にもあきらかなのだから。

「新作のコンセプトは内なる自分との戦い。現状オレに敵うヤツは誰もいないわけだから、いまの自分にとってオレ自身はもっとも相応しい競争相手と言えるだろうな」。

『King』の成功で王位を決定付けたT.I.の新たなターゲット、それは大胆不敵にもT.I.自身である。約1年半のスパンで届けられたニュー・アルバム『T.I. Vs T.I.P.』は、彼が抱えるふたつのペルソナ=T.I.とT.I.P.の対比をとおしてみずからの内面を深く掘り下げていく、壮大なコンセプト・アルバムとなった。熱心なファンであれば、セカンド・アルバム『Trap Muzik』にその名も“T.I. Vs T.I.P.”なんて楽曲が収められていたことを思い出すかもしれない。

「基本的には同じだよ。あの曲で表現しきれなかったことをこのアルバムで打ち出している。ジャケットで言うとスーツ姿のほうがT.I.で、カジュアルな格好のほうがT.I.P.。T.I.はレイドバックしていて物腰も柔らかい感じのキャラ。一方のT.I.P.は無責任でちょっと向こう見ずなところがある。でも、着飾って授賞式に出席してるT.I.も、クラブの外で殴り合いのケンカをしてるT.I.P.も、両方とも同じオレなんだ」。
▼T.I.の作品を紹介。

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掲載: 2007年07月26日 18:00

ソース: 『bounce』 289号(2007/7/25)

文/高橋 芳朗