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インタビュー

SEEDA(3)

ストリートは誰も愛してない

  「この『街風』に関してはいっしょにやる人といろんなことがあって、こういうふうに並べたいみたいなのはないです。いっしょにやる人との間でベストな点を取ってやった積み重ねだから」。

その言葉のように、フィーチャリング・アーティストの意向も踏まえたうえで楽曲の方向性が決まっていった部分があるという意味でもやはり、これはSEEDA個人にとっての100%ではないという意味なのだろう。先にSEEDA本人が「ミックスCDに近い」と話しているように、このアルバムはコンピレーションのように楽しめるものかもしれない。

「スタイルが違うのにフィールできるっていうか。なるべく自分とかぶってない人とやりたいんですよね。スタイル的に。そのほうがおもしろいかな?って。自分が日本のヒップホップに持ってる印象って、いろいろなスタイルがあるなかで、その一部分しか聴かない人たちが多いと思うんですよ。〈これがヒップホップでこれ以外は違う〉みたいな排他的な感じで。だから、そんなことはなくねぇ?みたいな。僕にとっては、これはひとつの自分の音楽の地元みたいなメンツで構成してる」。

先に挙げた以外にも漢(MSC)やD.O、L-VOKAL、4WDといった多彩なMC陣が登場し、トラックメイカーとしては長年の盟友であるI-DeAに、『花と雨』をフル・プロデュースしたBACH LOGIC、さらにDJ WATARAIらが参加している。そのように、制約のある与えられた環境の中でも軸となる意志を作り上げたSEEDAは、結果としてこのうえなく豪華で質の高いアルバムを完成させたと言えよう。その一方で、リリックに定評のあるSEEDAの、本作では表現しきれなかった現在にはもちろん興味がある。しかし、それはすでに制作に取り掛かっているという次のアルバムで聴くことができるはずだ。

「もっと平和な感じにしたいですね(笑)。もっと他愛もない日常だったり、普遍的なこととか光と陰でいったら、光の部分、いまの日常のことを歌いたいんですよ。というのも、僕はここ3年ぐらい、今回のリリックにあるような刺激的な生活はしてないから。非ストリートというか、〈ストリートは誰も愛してない〉みたいなことを言いたい。ストリートのことを好きな奴はいるけど、ストリートは誰のことも好きじゃない、っていうことを言いたいんですよ。だから、いま僕はこういう生活を送ってるみたいなことをね」。

その内容は今後の楽しみとして心待ちにしておくとして、まずは今回の『街風』を思う存分堪能するべきだろう。
▼『街風』に参加したアーティストの作品を一部紹介。


L-VOKALの2006年作『LAUGHIN'』(PRHYTHM)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年11月01日 21:00

ソース: 『bounce』 292号(2007/10/25)

文/橋本 修