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インタビュー

SCARSの周辺に気を付けろ!! その1

  USのヒップホップではもはや珍しくないハスラー的なる世界は、いわゆるストリートのメンタリティーとして日本のヒップホップ層にも受け入れられ、日本語ラップの世界にも影を落としはじめていたが、日々の生活の実景としてそれをあからさまに作品化していったのがSCARSだ。リーダーの“A”THUGをはじめ、bay4k(最近「リンカーン」でTVにも露出!)、STICKY、MANNY(活動休止中)らMC勢と、トラックメイカーのSACらを擁する彼らは、SEEDAやI-DeAの助力で2005年あたりを境に本格的な活動を開始。2人とBES(SWANKY SWIPE)を引き入れる形でフル・アルバムへと至る。SEEDAとDJ ISSOによる〈CONCRETE GREEN〉などにも個々が露出し、良い意味でバラバラなキャラやスキル、天性のファニーさを提示した彼らはそれぞれにパワーを増しつつ、どうやらクルーとしては解散の方向にあるようだ。もっとも、個々の結び付きは依然強く、個々の動向と共にまだまだ目を離せない。
(一ノ木裕之)


SHIDA DA DASHI 『DETONATOR』 Pヴァイン(1999)
牙を剥くような荒々しいバイリンガル・フロウが全編で吐き出されるロウなファースト・アルバム。定番ブレイクを多用して全曲を手掛けたI-DeAのプロダクションも却って新鮮か。四街道ネイチャーのMIC AKIRAも登場。
(出嶌)

SEEDA 『Flashsounds Presents Ill Vibe』 Pヴァイン(2003)
バイリンガルMCとしてのトップ・スキルをグッと前面に押し出すこととなった久方ぶりのアルバム。英語アタマと日本語アタマを同時進行でスタートさせて入り乱れていくパズル的なリリックに言葉の刃が鈍く光る。
(一ノ木)

I-DeA 『self-expression』 Pヴァイン(2004)
かねてから示してきたソウルに根を張るプロデュースの才を、SEEDAら多彩なラッパー陣と共に1ステージ上へと押し上げた初のリーダー作。LUNCH TIME SPEAXとの“真心眼Form”はひときわシャープな作風を彼の持ち札に加える秀逸さ。
(一ノ木)

I-DeA presents SEEDA 『GREEN』 Pヴァイン(2005)
入り乱れたパズルを成すリリックの霧がいささか晴れたことは、世を見つめる彼の目がフラットになってきたことと歩調を合わせたものだ。ここからSCARSのコネクションが作品化されていく点で、『THE ALBUM』の前夜的な意味合いも。
(一ノ木)

I-DeA 『Da Front And Back』 徳間ジャパン(2005)
演者の幅を広げ、持てるアイデアの豊富さを楽曲のヴァラエティーに落とし込んだ2枚目のリーダー作。MSCとTicaの武田カオリを絡ませるなど興味深い楽曲が並ぶなか、ディープなSEEDAの“Walk wit me”やSCARSの6人リレーが光る。
(出嶌)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年11月01日 21:00

ソース: 『bounce』 292号(2007/10/25)

文/一ノ木 裕之、出嶌 孝次