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インタビュー

Chris Brown (R&B)(2)

もう18歳なんだから

 このアルバムからは〈クリス伝説〉に拍車を掛けることになりそうな特大ヒットがすでに生まれている。ソウルジャ・ボーイの“Crank That(Soulja Boy)”を退けて全米チャートの首位に立ったT・ペインとのジョイント“Kiss Kiss”。クリスの瑞々しさとT・ペインの猥雑さが奇妙なバランスで共存するヘヴィーなファンキー・バウンスだ。

「レコーディングの時、T・ペインは思いついたままにラップしはじめたんだけど、まるでジェイ・Zがブースに入ってるみたいだったよ。俺のヴァースに関しても〈もう18歳なんだから言いたいことは何でも言えるはずだぜ〉ってアドヴァイスしてくれてね。結局そのリリックはセクシーすぎてダメ出しされたんだけど(笑)」。

 ミディアム~バラードでは、J・ホリデイの“Bed”で名声を決定付けたLOS・ダ・マエストロとドリームのコンビによる“You”と、もろにビヨンセの“Irreplaceable”を想起させるスターゲイト製の“With You”をハイライトとしたい。爽やかで甘酸っぱい旋律に胸ときめく後者は“Kiss Kiss”に続くニュー・シングルにも決定している。

「“With You”は“Yo(Excuse Me Miss)”のニュー・ヴァージョンって考えてるんだけど、この曲ではより深く恋愛について歌っていて、きっと多くの人に共感してもらえると思う。誰でもずっといっしょにいたいって思う人が心の中にいるはずだからね。この曲は大好きな相手といっしょにいる時のスウィートな状態を表現しているんだ」。

 クリスを盛り立てる制作陣は、前作に引き続いての参加となるスコット・ストーチやショーン・ギャレット、ドレ&ヴィダル、ブライアン・マイケル・コックス、アンダードッグスをはじめ、スウィズ・ビーツ、ジャジー・フェイ、ランナーズなど。これまでラッパーとの絡みが少なかったクリスだが、ここではその借りを返すようにウィル・アイ・アムやカニエ・ウェスト、ビッグ・ボーイ、ゲーム、リル・ウェインといったエース格をズラリと並べている。

「2パックみたいに、この世を去ってもアルバムがたくさんリリースされるような状況を作りたい。リル・ウェインがまさにそう。彼はものすごいペースでミックステープを出してるだろ? いったいどこからこの曲は出てくるんだ!?って感じでね。俺も曲をたくさん作って、孫ぐらいの世代に〈クリス・ブラウンのニュー・アルバム聴いた?〉なんて話をしてもらえたら最高だね」。

 風貌からくる印象に反して、案外クリスはタフなメンタリティーの持ち主なのかもしれない。この『Exclusive』がマイケル云々といった論調を強く後押しすることになるのは間違いなさそうだが、彼ならばプレッシャーの雨のなかも笑顔ですり抜けていくはずだ。ひとまずは第2関門を楽勝でクリア、と言っていいんじゃないだろうか?
▼『Exclusive』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年12月06日 20:00

ソース: 『bounce』 293号(2007/11/25)

文/高橋 芳朗