Raheem Devaughn
このうえなくアーバンなスウィートネスと漆黒のグッド・ヴァイブがトロリと溢れ出せば、もう去年のことなんか速攻で忘れてしまうよ……新しい年、新しいソウル・ミュージックの光と道は、この天才によって拓かれている!
すべてがソウルフル
ラヒーム・デヴォーンのセカンド・アルバム『Love Behind The Melody』は、昨年6月の来日公演時には「80%完成していた」という。制作期間は1年半~2年というから、前作『The Love Experience』(2005年)をリリースした頃から制作していたことになる。「ただ何となく頭に浮かんだ」という表題にはふたたび〈Love〉の文字が刻まれているが、聴き進めていけば、これが単なる続編ではないことに気付くはずだ。
「もちろん前作からの流れというのもある。トライブ・コールド・クエストが大好きなんだけど、彼らは作品のアートワークに一貫性を持たせていただろ? それと同じ意味合いというか。ただ、高いクォリティーを保ちながらも常に違うものを提供していきたいんだ。今回はツアーで経験を重ねたことでリリックもヴォーカルも成長したと思う。曲のタイプによってヴォーカルのデリヴァリーも変えたし、サウンド面でも実験的なことをやったよ」。
アルバムの冒頭曲では、堂々と〈R&Bヒッピー・ネオ・ソウル・ロックスター〉と宣言。以前からたびたび用いているこの言葉を、本人は「自分自身をマーケティングしていくために、いま俺が築いているブランド」と言い、「ラヒーム・ブランドが定着したら、そこから活動の場を広めていく」と語る。自分の音楽を特定の言葉で括られることに過剰な嫌悪感を示す狭量なアーティストよりも、それを逆利用している彼は一枚も二枚も上手なのだ。
本人いわく「俺がやることはすべてソウルフルになると思う」──だから、無闇に尖らない。本当にソウル・ミュージックを自分のものにした人間でなければ、こんな発言だって出てこないはずだ。そして、新作のソウル濃度もすこぶる高い。テンプテーションズの名曲“My Girl”を用いてクワメが独創的に仕上げた“Friday”もさることながら、何より先行シングルの“Woman”がソウルフルで美しいR&Bだった。ラヒームはこれを先行曲にしたいとレーベルに訴え続け、その結果、同曲は来るグラミー賞の〈最優秀男性R&Bヴォーカル/パフォーマンス〉部門にノミネートされるまでに。プロデュースは現在DCに拠点を置く名手、チャッキー・トンプソンだ。
「チャッキーは俺のメンターさ。実は俺がジャイヴと契約する前、彼のスタジオでインターンのようなことをやっていたんだ。昔から彼の音楽は大好きなんだよね」。
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