JANET(2)
みんな予習してきてくれたみたい
その軸となったのは、20年以上に渡ってジャネットと連れ添ってきたジャム&ルイスとの訣別だ。「きっとまたいっしょにやると思うわ」というジャネットだが、本作には『Control』以来、初めてまったく彼らの名が記されていない。というので不安になるファンも多いはずだが、ところが、その代わりに導入されているのは何とも大胆な手法。現在活躍中の若手クリエイターたちを積極的に起用して、彼らに〈ジャネットらしい曲を作ってもらう〉というものだ。ジャネット自身も本作では曲作りに一切関わっていない。
「彼らは私がニュー・アルバムの準備をすると知って、参加したいと意思表示してくれたの。〈ぜひともいっしょにやりたい!〉なんて、嬉しいことをたくさん言われたわ……だから曲はすでに出来上がっていたし、彼らは私のことをよく理解してくれていた。しっかり予習してきてくれたみたいなの(笑)。彼らが作ってくれた曲は、どれも新しいヒネリが付け加えられた〈クラシックな(昔ながらの)ジャネット〉になってるわ」。
その〈彼ら〉というのは、いまを時めくニーヨやドリーム、ジョンテイ・オースティン、そしてトリッキー・スチュワートやスターゲイト。さらにファースト・シングル“Feedback”を手掛けたロドニー・ジャーキンスもアッパー系で見事な手腕を振るっているし、ジャーメインも表に出た曲こそ少ないものの、裏方でガッツリとイイ男ぶりを発揮している。LA・リードと同様、彼らもここぞとばかりにジャネットへの長年の想いを込めて、渾身のキラー・チューンで対抗。そのどれもが、しなやかでゴージャスなビートと、とろけるようなメロディー……いわゆるジャネットらしさを携えているのだが、それでいてソニック的にはモダンなエッジーさが印象的だ。新しい展開を追い求めるあまり、却って自分らしさを見失いがちだったここ数作でのブレが、まるでウソのよう。ジャネットは自分のグルーヴを見事に取り戻すことに成功したと言えるだろう。