インタビュー

JANET(3)

それが愛というものだから

 まずは“Feedback”や“Luv”をはじめとするアッパー系がズラリ並んだ前半に圧倒される。ダフト・パンクもビックリの4つ打ちエレクトロ“Rock With U”などにスッゲエ! スゲエ!と驚愕しているうちに、次から次へと斬新なチューンが押し寄せる。もっとじっくり味わいたくても、そんな余裕すら与えてくれないほど。この前半だけで、すでに本作を手にして良かったと思う人は多いハズだが、ミディアム系にガラリとムードの変わる中盤あたりから、ますますアルバムとしての真価や本領が見えはじめる。ニーヨのペンによる極上美メロの“Can't B Good”、ジャネット自身が初めて聴いた時に「涙が止まらなかった」という“Never Letchu Go”など、まさにまったり系の至福のひと時。そして終盤近くでふたたびニーヨが手掛けた表題曲“Discipline”のセクシーなスロウ・ジャムで誘惑される頃には、すっかり降参しているという寸法だ。

「ちょっぴり私の“Any Time, Any Place”(93年)にも似ている感じよね。でも歌詞の面でヒネリが加えられているの。私のために書き下ろされた曲なんだけど、〈これって、ジミー(・ジャム)とテリー(・ルイス)と私とで書いていてもおかしくない曲!〉って凄く驚いたわ。凄く私っぽい曲だなと思って、即座に気に入ってしまったの」。

〈ダディ、私にオシオキをしてちょうだい……〉と歌われるこの曲の〈ダディ〉とは、恋人のこと。いわゆるベッドルームでのプレイが赤裸々に歌われているのだ。そんな歌詞を書いたニーヨもエロいが、それを歌ってしまうジャネットも相当エロい。これがビヨンセなら〈私が歌っているのは男女の関係だけではないのよ〉などとはぐらかしてしまうところだが、ジャネットはと言えば、「だって愛についてのアルバムですもの、当然でしょ。セクシャルなことを挑発的に歌うことには、まったく抵抗ないわ」と、あっけらかん。そういう部分も含めて『Discipline』は、大人の女性にしか描けない愛のアルバム、という言い方もできそうだ。
▼『Discipline』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年03月06日 18:00

ソース: 『bounce』 296号(2008/2/25)

文/村上 ひさし