インタビュー

DJ BAKU

ビートメイカーとしてのデビュー作でキャリアを総括した彼が、今度はすべてを脱ぎ捨ててダンス・ミュージックの未来を提示! 今度のBAKUは肉体的です!!

それは禅の考え方に近い


 「このアルバムはけっこう素の自分。前のアルバム『SPINHEDDZ』には〈繋がりのある人は無視できない〉という気配りみたいなのがあったけど、今回はそういうことを何も考えずに作れた。東京ってすごい派閥があるじゃないですか? 僕は意外とその派閥に巻き込まれてない。例えばAとBという本気で争うような派閥の間に僕はいるんだな、ってことを1枚目に作る時には考えていたんですよね」。

 いわゆる純粋な音楽以外のもの――ということ。僕の前にミリタリー風の黒いニットを着たDJ BAKUが座っている。文化人/作家のいとうせいこうが朗読を披露しているこのセカンド・アルバム『DHARMA DANCE』では、いわゆる音楽以外の事情はまったく考えずに作ったと彼は語る。

「いとうせいこうさんとはレコーディングの日まで会ってないんですよ。以前に大阪の鶴の間でせいこうさんがライヴをしてて、その音源をネットで聴いたんですが、それがカッコ良くて。最初手紙でコラボレーションの依頼をしたんですよね、そこにファースト・アルバムも同封して。そうしたら、〈全然OK〉みたいな感じで快諾してくれたんです。そうとう練習していたとは思うんですけど、当日スタジオに来たら2テイクでOK。忙しいのもあったと思うんですが、ぱっと帰っていって……」。

 そうしたいとうせいこうをBAKUは「職人っぽいっていうか、プロフェッショナルだなぁ」と評す。この言葉は深く考えるべきだと、僕は思う。そして、深い思考を促すように(?)アルバム・タイトルには、誰でも知っている〈DHARMA(達磨)〉がついている。

「僕の友達に占い師がいて……」との発言に、〈当たりますか?〉と尋ねてみると、「初期は神懸かっていましたよね。周囲の人を占った時も、それが見事に当たってた。で、彼と〈宗教で戦争が起きるなんて……〉みたいな話をしていたんです。僕は〈神様に形も見た目もあって、それ同士がケンカをして、戦争が始まるのはくだらないな〉と思ってて。で、〈60億人の人間がいるんなら、60億の神様がいると思う〉って言ったら、その友達に〈それは禅の考え方に近い〉って言われたんです。で、BAKUっていうのも梵字でいまある仏像をすべて表す言葉らしいんですよ。それを知った時、僕が仏教用語を使うのも意味があることなんじゃないかな?と思ったんです」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年04月17日 18:00

ソース: 『bounce』 297号(2008/3/25)

文/荏開津 広