HY
初の武道館ライヴ~USツアーを経て、さらに絆を深めた彼らの新作が完成! 大きな愛に溢れた5人のメッセージは、ますますスケールアップしているぞ!
楽しくいろいろなものを詰め込めた
HとYが囲む『HeartY』――〈心のこもった〉〈愛情の深い〉という意味のHY通算5枚目となるアルバム・タイトルは、このイノセントな沖縄の音楽集団の作品に、そしてさまざまな形の愛を表現した新作に相応しい名前だ。
「この5枚目で、ようやく自分たちがやりたいことを出し切れました。音楽をやるうえで自信が付いたっていうか」(新里英之、ヴォーカル/ラップ/ギター)。
やっと、という表現はいささか意外に感じるが、考えてみれば同い年のこの5人はまだ24歳。デビュー作『Departure』の頃は高校生だった。
「1枚目の頃は、ただただ音楽が好きで、がむしゃらにやってましたね。『Street Story』はたくさんの人に聴いてもらえたけど、そこからプレッシャーも感じて。でも次の『TRUNK』は忙しいなか、みんなで乗り越えて作り上げたアルバム。『Confidence』ではコミュニケーションも取れてきて、レコーディングも楽しかった。そこからまたたくさんの経験をして、もっと楽しくいろいろなものを詰め込めたのが『HeartY』ですね」(新里)。
「最初の頃のレコーディングはピリピリしたり、緊張してた。それからいろんなことがわかってきて、こうすればもっと楽しくなるんじゃないか、ちゃんと自分を出していけるんじゃないかな、と思えるようになりました」(宮里悠平、ギター)。
昨年USツアーも経験し、演奏スキルを高めたうえで作られた新作は、優しくてふくよかな音が印象的。アレンジは練り込まれ、アンサンブルには信頼し合う同士だからこその絆が窺える。また仲宗根泉が主導する“Cheaters”は当初からミクスチャー・ロックを標榜してきたバンドと、R&B志向を持つ彼女の交差点だ。
「いままでは〈これはHYらしくないから出せない〉とか〈こういうのはみんな弾けないんじゃないかな〉とか溜めてた部分があったんですけど、今回はそれを受け入れてもらったから、すごく楽しかったです」(仲宗根泉、ヴォーカル/キーボード)。
「音楽の面でもプライヴェートの面でもみんなと近いから、気持ちもわかるんです。で、曲をいろいろ出すなかで、〈あ、こういうふうに思ってたんだ〉って、また改めてみんなを知るっていうか。外れてたら、みんなちゃんと言うと思いますし……まあ、そういうこともなかったけど(笑)」(許田信介、ベース)。
この“Cheaters”が彼らにとってもうひとつ画期的なのは、恋愛における男性側のズルさ、汚さを告発する歌であること。実体験ではないようだが、一昨年に発表した詩集「あなたへ」での赤裸々な恋愛感情が多くの共感を集めた仲宗根だから書けたものなのだ。
「ファンの人は〈泉の書く歌はいつも純粋〉とか〈キレイな恋愛で、一途〉みたいな印象を持っていると思うけど、それだけじゃないんだよって言いたくて。他人から聞いた話を〈それがこんなだったら〉〈これはきっとこういう考えでこうきてるんだな〉って想像を膨らませて、ドラマみたいになったものを描き映したんです」(仲宗根)。
「明るい曲よりも、普段言えないことを書いた時の共感のほうがデカいですよ。“Cheaters”に男はドキドキすると思うし、その影の部分での共感の力があると思いますね。まあ泉が俺のこと書いてるって勘違いする人が出てくるかもしれないけど(笑)」(名嘉俊、ドラムス/ラップ)。
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