インタビュー

DAN LE SAC vs SCROOBIUS PIP

視点を変えれば何かが見える。アングル次第で真実も変わる。シニカルに価値観を揺さぶる新星、ダン・ル・サックvsスクルービアス・ピップは……ただのバンドだ!

強い思いは頭に残る


 〈ビートルズ、ただのバンドだ!/レッド・ツェッペリン、ただのバンドだ!(中略)レディオヘッド、ただのバンドだ!/アークティック・モンキーズ、ただのバンドだ!〉──〈どんなに音楽が素晴らしくても、アーティストを崇め奉るべきじゃない〉と皮肉な警告を鳴らした“Thou Shalt Always Kill”は、〈YouTube〉をきっかけにBBCやNME誌といった各メディアを巻き込んで、たちまち2007年のアンダーグラウンド・アンセムへと駆け上がった。この印象的なメッセージを発信したのは、ダン・ル・サック(トラックメイカー)とスクルービアス・ピップ(MC)。皮肉たっぷりなリリックとエレクトロやロックを内包した先鋭的なヒップホップ・ビートで時の人となっているコンビだ。すでに世界中のフェスからオファーが殺到(〈フジロック〉出演も決定!)するほど人気絶頂の2人が、このたびファースト・アルバム『Angles』を完成させた。前述のシングルはレックスから出ていたが、アルバムはジョン・ピールの後継者とも言えるロブ・ダ・バンク主宰のサンデイ・ベストからの登場となる。

「やりたいようにアルバムを完成させた後で、レコード会社との契約を探したんだ。というのも、レーベルから自分たちが作る音楽について指示されたくはなかったからね。完成品を聴かせたなかで、内容にいちばんノッてくれたのがサンデイ・ベストだった。初期段階から非常に協力的で、良いチームだったから決めたんだよ」。

 そう返答してくれたのは、刺激的なリリックを持ち味とするスクルービアス・ピップ(以下同)。セイジ・フランシスやソウル・ウィリアムスからインスピレーションを得るという彼のリリックは、意味深な題材や重いテーマ(自傷行為や自殺など)のストーリーを描き出す一方で、聴き手が楽しめるような陽気さとユーモアも兼ね備えている。

「リリックに関しては、アイデアが思い浮かんだ段階で楽曲の構成を練っていくんだ。1週間かけて1行書くこともあれば、ノッてる日は10分ごとに良いリリックが綴れる。特に日記とかは書いてないね。よく旅行先で写真をたくさん撮りまくる人がいるけど、俺は景色を心に記憶させる主義で、写真は撮らないんだ。リリックも同じで、書き留めなくても〈強い思いは頭のなかに残る〉と信じてるんだよね」。

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掲載: 2008年06月19日 00:00

更新: 2008年06月19日 17:39

ソース: 『bounce』 299号(2008/5/25)

文/bounce編集部