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インタビュー

DAN LE SAC vs SCROOBIUS PIP(2)

レディオヘッドは……

 そのように才気溢れるMCのピップをして「既成の音楽と一線を画するほどクリエイティヴなビートを作る」と言わしめるのが、相棒のダン・ル・サックだ。その素晴らしいセンスは『Angles』の随所で確認できるが、先述の“Thou Shalt Always Kill”でも〈ただのバンド〉と名を挙げるレディオヘッドの“Planet Telex”を大胆にサンプリングした“Letter From God To Man”は特にインパクトのある仕上がりだろう。

「レディオヘッドは実験的な試みを恐れない偉大なバンドだと思うよ。最近の作品には心を動かされないけど、初期のは大好きさ」。

 また、ディジー・ラスカル“Fix Up Look Sharp”(の元ネタであるビリー・スクワイアの“Big Beat”)を用いた“Fixed”なんていう興味深い曲もある。

「ディジーのはソロ時代によくライヴでカヴァーしていた曲だよ。俺の音楽は他のUKヒップホップとは少し違うから、リスナーの注目を集めるために認知度の高い曲を引用してみたのさ。ちなみにその“Fixed”では〈つまらないUKヒップホップの現状〉についてライムしているんだ。ディジーやワイリーは素晴らしいアーティストだと思うけど、彼らのブレイク以降はその真似をした奴らが多すぎるね」。

 さて、最高のファースト・アルバムを仕上げた彼らだが、今後についてもすでにいろいろとプランを練っているようだ。

「昔から大ファンだったバット・フォー・ラッシィズや古い友人のアデルと仕事したいね。アデルとは昔いっしょに曲を書いていたんだけど、突然大ブレイクしちゃって、まだその曲は仕上げていないんだ。落ち着いたら曲を完成させたいよ」。

 そのアデルも含め、ジャック・ペニャーテやマーク・ロンソン、ケイト・ナッシュら現在の英国ポップ・シーンを代表する面々との交流も実は盛んだという2人。これからも個々のおもしろい活動が展開されることを期待したい。とはいえ、相思相愛の2人だけに信頼関係は非常に厚く、「俺にはダンの作るビーツが不可欠だし、ダンも俺のリリックを重要視しているからね」と話すように、あくまでもコンビとしての活動を重視しているとのこと。ただ、ピップには将来的な目標があるようで……。

「映画の脚本を書いてみたいんだ。3、4本分の構想は練ってきたから、そのうちにぜひ実現させたいなあ。好きな映画は〈バッファロー66〉だね。ヴィンセント・ギャロはミュージシャンでありながら、脚本家や俳優、フォトグラファー、モデル……とさまざまな顔を持っているよね。俺も将来的にはいろんな形で自分の作品を発表していきたいんだよ」。

 止めどなく溢れる2人のアイデアが今後どういう形で発揮されるかも楽しみだ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年06月19日 00:00

更新: 2008年06月19日 17:39

ソース: 『bounce』 299号(2008/5/25)

文/bounce編集部