インタビュー

COMA-CHI(2)

踊れて、言葉が入ってくる音楽

 一言で言うなら、実に感情移入できるアルバムである。ただし『RED NAKED』がなお素晴らしいのは、それでいて〈踊れる〉ということ。腰にくるDJ Mitsu the Beatsのビートにタイトなライミングで絡む先述の“name tag(C-O-M-A-C-H-I)”、TETTORY BLK制作のハウス・ビートで伸びやかな歌と流麗なラップを披露する“material world”など、どの曲もフックのある言葉に耳を奪われつつ、気付けば身体は気持ち良く揺れてるといった具合だ。それはトラックと密着してグルーヴを生み出していく抜群のライミング・センス/リズム感を備えたCOMA-CHIだからこその賜物だろう。

「日本語のラップって単純に耳触りのいいものと、リリックが重すぎて踊れないもの、その二極化がずっとあると思うんです。でもUSのヒップホップは踊れて、かつ言葉が入ってくる。そこを私は日本語で追求していきたいんです」。

 そしてボーナス・トラックには、何と“B-GIRLイズム”なる曲を収録。そう、RHYMESTERの名曲“B-BOYイズム”への女性目線でのアンサー・ソングである。「前からやってみたいと思ってたことですけど、実際はめちゃくちゃ大変でした……」と、うなだれてはいたが、それほど真剣に取り組んだ成果は曲にしっかり現れている。この“B-GIRLイズム”もまた名曲として語り継がれていくはずだ。

 最後に「人はフィメール・ラッパーって括りたがるけど、私自身そこに執着はないです。女性だからっていうこだわりもないし、ラップもやれば歌も歌うし(笑)」と笑っていたが、確かにこのアルバムを聴くと彼女をカテゴライズするのは無意味なことかもしれないと思う。COMA-CHIはきっとこの先、さまざまな枠を超えて日本のミュージック・シーンを変える輝かしい存在になっていく。そんな嬉しい手応えを感じずにはいられないから。
▼『RED NAKED』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年02月19日 20:00

ソース: 『bounce』 306号(2008/12/25)

文/岡部 徳枝