インタビュー

ヴァラエティー豊かな実力者が揃うフィメール・ラッパーの現在

 本文でCOMA-CHI自身が指摘するように、女性のラッパーを〈女性ラッパー〉として括る行為に当人たちが良い反応を示さないのは当然だろう。ただ、女性ではHACのみが登場した〈さんピンCAMP〉の時代からラッパーの全体数が何十倍にも増えたことを考えても、そのなかで女性の占める割合はさほど変わっていないわけで、そうなると良くも悪くも女性であることを周囲が意識するのは仕方ないのかもしれない。ただ、そんな状況を鑑みれば、表舞台に出るためのハードルが男よりも高い女性ラッパーのほうが、必然的に作品のレヴェルは高いように思う。90年代にHACやRIM、名古屋のNOCTURNらが基礎を作り上げ、2000年代に入るとMiss MondayやHeartsdalesといったメジャー組から、エロジャケで話題だったMARIA、侠気漲るMAIRA、dj hondaの送り出した姫、横浜のBRIER、沖縄のLIL' AI、大阪のNORISIAM-Xらが折々に注目を集めていた(いる)。最近ではRUMIやANTY the 紅乃壱らより視野の広い才人が支持を得ているし、そのANTYに続く蝶々、〈トイ・ラップ〉を標榜するSeek、リリカルなCOPPU、そしてビッチなキャラのCHRISTY(TRILL GRILLZ)などにも注目したい。こうして羅列してみると男性以上に個性豊かに思えるし、彼女らやCOMA-CHIの活躍が全国のまだ見ぬ女マイカーたちを勇気づけることができるのだとしたら、ここであえて括ってみた意味もあるのではないだろうか。


96年のサントラ『さんピンCAMP』(cutting edge)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年02月19日 20:00

ソース: 『bounce』 306号(2008/12/25)

文/出嶌 孝次

記事ナビ