インタビュー

CHEHON

韻を踏むこと、それすなわち俺のライフワーク──レゲエを生業とすることを心に誓った一人の若者が、最新のビートを後ろ盾にいま革命を起こす!

知らん間にタフになってた


  大阪にめちゃくちゃおもしろい歌い手がいるらしい――いまから4年ほど前、そういう類いの噂をよく耳にした。直後に歴史的ダブ・ヒットを記録することとなる“みどり”が、現場レヴェルでジワジワと人気を集めはじめた頃の話だ。恥ずかしながら、当初はこのCHEHONという男が、シーンにおいてここまで重要な存在になるなんて思いもよらなかった。

「全国どこに行っても俺の曲を熱心に聴き込んでくれてる人がいて、〈ありがと~〉とは思うけど……。顔が売れたと感じたのは、地元のオバチャンに声をかけられた時ぐらい。〈あんた凄いな~。うちの息子が好きやねん。サイン書いたって〉みたいな。あとは普通っすよ」。

2006年に“みどり”がCD化され、翌年には『「チェホンのファーストアルバム」という名のアルバム』でアルバム・デビュー。その勢いに乗ってスタジオを設立したり、メジャー入りも果たしたりと、トントン拍子でここまで昇り詰めてきた。もっとも、劇的な環境変化に躍らされることなくスキル磨きを怠らなかったからこそ、現在の彼があるわけで……。

「毎日歌ってましたからね。どんなに酒を飲んでもタバコを吸っても、毎日デッカイ声を出してたら知らん間にタフになってた。あとは精神力です、根性です(笑)。だから、昔の音源が照れ臭くて聴けないんですよ」。

移籍後初のニュー・アルバム『RHYME LIFE』を聴けば、違いは歴然。声量、リズム感、リリックの情報量、息継ぎのタイミング、フロウの滑らかさ、どこを取っても格段の成長が窺える。もともと才能のある人が尋常でない努力を重ねたら、そりゃ誰も敵いっこない。

「この数年で〈レゲエで生きていこう〉みたいな意識は芽生えましたね。だから韻を踏む行為ひとつを取っても、特別といえば特別だけど、特別じゃないといえば特別じゃない。みんな毎日会社に行ってデスク・ワークとかするじゃないですか? 俺にとってそれが韻を踏むことなんです。だからタイトルも『RHYME LIFE』。日常生活をそのまま切り取った感じ」。

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掲載: 2009年04月09日 15:00

更新: 2009年04月09日 17:34

ソース: 『bounce』 308号(2009/3/25)

文/山西 絵美