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インタビュー

大阪レゲエの歩みと、次世代を担う若手の注目株を紹介!

 レゲエ激戦区、大阪。その土台は80年代後半からあったワケで、90年代前半にはダンスホールの出音を意識したシステムを持つクラブやレゲエ・バーが、いわゆるキタやミナミだけでなく、堺~泉州他あちこちで賑わっていた(京都や神戸も熱かった!)。そして、泉州は貝塚が生んだBOOGIE MANによる“PACHINCO MAN”(94年)の大ヒットは、図らずも〈ナニワ・レゲエ〉というメディアが後乗りした形のブームを呼ぶことになるのだが、そのバブルは3年ともたなかった。そうしたレゲエ株の高騰と暴落を現場の最前列で見ていたのが、PUSHIMやNG HEADらTOKIWAの面々。そこで彼らが得た教訓は、ジャマイカの芸能を日本の芸能界に準えてはならないということだった。90年代後半にはクローズを余儀なくされたクラブもあったが、一方で堺築港でのTERMINATORの野外無料ダンスなどに〈本当に好きな人だけ〉が詰め掛けるような良い状況も。そして、2000年代にはカエルスタジオを筆頭に〈レーベル〉という名の良い環境が整い、氷河期を耐え抜いた大阪シーンは次のステージに突入する(奈良出身の三木道三がブレイクしたのもこの頃)。

 CHEHONは言う、「大阪の良さは縦横の繋がりがあって、ヴェテランから若手までが同じ舞台に立てること。ラバダブでも、先輩らと並んで思わずファンに戻る瞬間があったり(笑)」。その諸先輩の筆頭となるDJが最前線に立ち続けるBOOGIE MANであることに異論を挟む者はいまい。そして。BEAR MANやPETER MAN、SILVER KING、Prof.CHINNENなどTOKIWA世代に程近い芸歴の歌い手から、KENTY GROSS、DINOSAUR、若手の門番=VADERといった中堅、(別掲のメンツに加えて)JING TENGやICE-KOH、55LEVEL、PEQUU、KOH-SONSANら若手……と役者は揃っている。そう、〈大阪プライド〉は一日にしてならず。

BIG BEAR 『BIG BEAR』 SCORPION(2008)
人気サウンド、SCORPION所属のシングジェイによる初作。本作収録の“そばに...”でブレイクした彼のウリは、直球勝負のリリックをメロディアスに届ける歌心だ。その独特なフロウには、ジャマイカでミックスを担当したドン・コルレオーンも驚いたとか。

ARM STRONG 『STRONG VIBES』 BLA-ZING DOG(2007)
〈絶好調ならヤーマンだ!〉などの名調子で知られるラバダブ・マスター。タフな声で遊び心満載のリリックをブッ放したこのデビュー作を携えて、同年には〈西の天王山〉ことビッグ・フェス〈HIGHEST MOUNTAIN〉にも初出演。

TAK-Z 『TEN GALLON』 Rockers(2009)
セレクターからシンガーに転向して5年目を迎えたTAK-Zの新作。シングル・ヒットした“君がいるだけで”をはじめ、持ち前の甘~い声を活かした前向きな歌が満載で、SKYLINE BANDやBAGDAD CAFE the trench townのホーンズも援護している。

MISON-B 『MISON-Baby's』 SPEEDEX(2008)
イロコマネチに続く存在として注目を集め、男だらけの現場で6年間渡り合ってきた女DJ/シンガーの一枚。KENTY GROSSやRUDEBWOY FACEとのコンビでもハスッパな個性を光らせていて、Raw Technicazといった注目バンドも参加。

強 『全ては唄の中で』 POSITIVE PRODUCTION(2008)
昨年はPEQUUと共に〈HIGHEST MOUNTAIN〉の前座も務めたシンガー兼DJの最新ミニ・アルバム。メッセージ性の高いリリックを軸に、時に切なく常に力強く歌い上げるスタイルは、“手紙”“五月山”でも聴けるとおりだ。VADERとのコンビ曲も収録。

NATURAL WEAPON 『GHETTO PRINCE』 rudebwoy funk music(2008)
FULL SMOKE STUDIOのたけしビートが全面制作、ALPS BANDも参加した泉州のゲットー・プリンスによるデビュー作。10代からマイクを取ってきた度胸と地声の良さが冴え渡る本作では、パトワ・リリックも披露。

BES 『Come inna de DANCEHALL』 ユニバーサル(2008)
N-O2解散後にソロで再出発し、“ずっと!!”でオリコン・インディー・チャートを制したシンガーのメジャー第1弾。その出世曲やMISON-B、BAGDAD CAFEとの再演/リミックス共演、THE BOOM“星のラブレター”のカヴァーなどを収録。

VARIUS ARTISTS 『YOUNG BLOOD 3』 カエルスタジオ/ビクター(2008)
ご存知大阪の要人、RED SPIDERのJUNIOR がプロデュースしたコンピ・シリーズ第3弾。ここで紹介しているメンツ以外では、G2や55LEVEL、DINOSAUR、導楽、 Marlynらが参戦。時間が経ってからわかる人選の間違いなさ!!

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年04月09日 15:00

更新: 2009年04月09日 17:34

ソース: 『bounce』 308号(2009/3/25)

文/二木 崇

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